御朱印やかわいらしいお守りが目当ての神社巡りが趣味という人が増加中。神社はそれぞれに伝わる由来があり、街の歴史との関係も深い場所だ。神社からお散歩をスタートすると、何度も訪れている駅も、初めて降りる駅も、これまでとは違う景色が見えてきそう。
気分も晴れ晴れ、中央線から神社さんぽに出かけよう!
西八王子駅から徒歩約10分の閑静な住宅街にある日吉八王子神社は、八王子の地名と関係の深い神社と言われている。御祭神は土地の神・國狭槌尊(クニノサヅチノミコト)、山の神・大山咋尊(オオヤマクイノミコト)、八王子八柱神(ハチオウジヤハシラノカミ)、素戔嗚尊(スサノオノミコト)。この土地が豊かになるよう願う人々の気持ちに寄り添うかのように、五穀豊穣、商売繁盛のご利益があるとされている。アジサイの名所としても知られる神社で、日々を心豊かに過ごせるようにお祈りしてみては?
空襲を逃れた古い社殿で八王子ゆかりの神様をお祭り
戦火を免れた拝殿と本殿。
創建は平安時代中期の天慶3(940)年で、土地の神である國狭槌尊の像を祭ったことから始まる。文禄4(1595)年には落城した八王子城から八王子権現を勧請して、この地域の鎮守となった。諸説あるが、八王子市のホームページによれば、この8人の王子を祭った八王子権現が“八王子”という地名の由来になったと言われる。
拝殿内の元禄2(1689)年製と伝わる狛犬(許可を得て、特別に撮影)。
日吉八王子神社周辺は、八王子市街地の約80%が焼失した昭和20(1945)年8月2日の八王子空襲を免れた。昭和16(1941)年に再建・改築された社殿が今も残っているのは、祭られてきた土地の神さまのおかげかもしれない。拝殿内には元禄2(1689)年に作られた珍しい木製の狛犬が置かれている。参拝場所からはガラス越しに見ることができるので、訪れたらのぞいてみよう。
あゆ塚は鳥居の手前にある。
鳥居のそばには、あゆ塚がある。このあゆ塚は、江戸時代に近くを流れる浅川で採れたアユが江戸幕府に献上されていたことを後世に伝え、アユの霊を慰めるために昭和32(1957)年に建てられたもの。浅川では、今も6月にアユ釣りが解禁され、釣りを楽しむ人の姿が見られるので、足を延ばして見物してみると普段は味わえない季節感を感じられるかも。
300株以上のアジサイがお出迎え。アジサイがモチーフのお守りや御朱印も
6月は参拝者用に七夕の短冊も用意される。(写真提供=日吉八王子神社)
近年、日吉八王子神社はアジサイの名所として知られるようになった。最初にアジサイが植えられたのは、平成23(2011)年のこと。代々神社に仕える一族の29代目が植え始めて、現在では約20種類、300株以上を育てている。すっかり梅雨の風物詩になり、近隣に住む人の散歩コースにもなっている。
6月1日から頒布されるアジサイの御朱印とアジサイのお守り。
令和7(2025)年からはアジサイをかたどった刺繍のお守り(初穂料800円)の頒布を開始。可愛らしいと人気上昇中だ。そのほかにもカラフルな御朱印(初穂料500円)が人気で、6月と7月にはアジサイ柄のものが登場する。
御朱印はその日頒布されるものが飾られている。
この御朱印の柄は、実は手作りの消しゴムはんこで作られている。季節に応じた6種類の柄と、通年頒布されているアユ柄の計7種類が毎年新しくなる。今年はどんな絵柄かと楽しみにしている人も多いそう。社務所は鳥居から40mほど離れた場所にあるので、ぜひ足を運んでみよう。
【立ち寄りスポット】種類豊富なパン屋さん『Due Tre』の西八ビーフカレーパン
地元出身の店主が平成18(2006)年にオープン。
日吉八王子神社から徒歩約5分のところにある『Due Tre(ドゥエトゥレ)』は、品揃えが豊富なパン屋さん。店内には惣菜パンからハード系、アップルパイなどたくさんの種類のパンや焼き菓子が所狭しと並ぶ。その数は1日約100種類と、平均的なパン屋さんの倍近い。
西八ビーフカレーパン238円。
入り口近くの目立つ位置に置かれているオリジナルの西八ビーフカレーパンは総菜パンの中でもいちばん人気。岩手県産の黒毛和牛と野菜がたくさん入った自家製カレーはマイルドで、子どもからお年寄りまで食べやすい。生地は表面がサクッ、噛むともっちりした食感。一つでしっかり満足感がある。
食感も楽しいポテチパン205円。
もう一つの名物はポテチパン。ポテチパンは横須賀の名物として知られる総菜パンで、店主が横須賀に出かけたときに気に入って取り入れた。ポテトチップスとキャベツが基本の具材だが、『Due Tre』では刻んだたくあんが入っていて、味と食感のアクセントになっている。ほかにはない味わいを楽しんでみて。
懐かしい空気漂う住宅街とアジサイで心和む時間を
令和5(2023)年に「本当に住みやすい街大賞」を受賞した西八王子は、新宿まで乗り換えなしで約40分なうえに、駅周辺にはスーパーや飲食店が揃う注目のまち。日吉八王子神社の社務所も戦前に建てられた古いものだが、付近もところどころ古い木造平屋の住宅が残り、懐かしく、どこかのんびりとした雰囲気が漂う。梅雨の晴れ間にお参りがてら日吉八王子神社のアジサイを愛でると、心和むひとときを感じられるはず。
取材・文・撮影=野崎さおり
上記の情報は2025年5月現在のものです。
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※表記されている価格は税込みです。