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- 安産子授け育児の神を祭る八王子・子安神社は月替わり御朱印も人気。安産とひしゃくの関係とは?
御朱印やかわいらしいお守りが目当ての神社巡りが趣味という人が増加中。神社はそれぞれに伝わる由来があり、街の歴史との関係も深い場所だ。神社からお散歩をスタートすると、何度も訪れている駅も、初めて降りる駅も、これまでとは違う景色が見えてきそう。
気分も晴れ晴れ、中央線から神社さんぽに出かけよう!
八王子駅
安産子授け育児の神を祭る八王子・子安神社は月替わり御朱印も人気。安産とひしゃくの関係とは?
JR八王子駅から徒歩約5分の場所にある子安神社。安産、育児、子授けの神を祭る歴史ある神社だ。境内には湧水が豊富に湧いていて、その量は毎日およそ1トンに及ぶ。「神社は本来、誰もがいつでも気軽に立ち寄れる場所」という考えのもと、開かれた雰囲気が作られているので、公園と同じように気軽に立ち寄ってみたい。
豊かな湧き水の存在が安産の神様を祭る神社創建に
子安神社はその名前の通り、安産や子授けなどのご利益があるとされる。主祭神は木花咲耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト、木花開耶姫命とも)。古事記では、自ら火を放った産屋で無事に子どもを出産したことから、安産の神とされている。
拝殿の手前には木花咲耶姫命の銅像を設置した神水殿が設置されている。この社には安産祈願の一環として、竹製のひしゃくで水をすくって奉納する。神水殿の向かって左側は底がないもの、右側は底のあるもので、底のないひしゃくは水が抜けるように安産でありますようにと妊婦が納め、底のあるひしゃくは体が元通りになるようにと産後に納めるものだ。また子授け祈願には神水殿内に竹筒を納める。
この祈願はかつて境内にある「ご神池(しんいけ)」で行われていたが、池の周りは滑って危ないと1998(平成10)年ごろに神水殿が新設されたのだとか。
そもそも子安神社の歴史は古く、江戸後期1830年ごろの書物、「新編武蔵風土記稿」には、759(天平宝字3)年に創建されたと記されている。この場所に安産を祈願する神社ができたのは、昔から水が豊かに湧く場所だから。安産祈願で有名な日本橋の水天宮にも水の文字が含まれるなど、命の誕生と水は密接な関係があると当時の人も考えていたようだ。境内にはいくつも水が湧き出る場所があり、大きな「ご神池」のそばは、夏の盛りでも少し涼しい。お参りに訪れたら足元に気をつけて池のそばにも行ってみよう。
御朱印ブームを機に祭事も一層賑やかに
子安神社では、御朱印の種類も豊富で、中でもかわいらしさが際立つのが月替わりの御朱印紙だ。薄い木材に、季節に応じた植物や鳥や亀といったいきものが描かれていて、自宅に飾りたくなってしまう。
この御朱印紙が準備されるようになったのは、2021(令和3)年ごろ。毎月1日に神社にお参りして御朱印をもらう朔日(ついたち)参りを趣味にする人がいると宮司が知ったことがきっかけだった。せっかく毎月御朱印をもらいに来る人がいるのなら、もっと神社を楽しんでもらおうというわけだ。
子安神社は、4月には桜をライトアップしたり、5月に行われるお稲荷さんの祭り、きつね祭できつねのメイクができたりと、神社訪問を盛り上げる試みにも熱心だ。実はそのうちいくつかは10年ほど前、御朱印に注目が集まったころに始まったのだとか。
子安神社は、4月には桜をライトアップしたり、5月に行われるお稲荷さんの祭り、きつね祭できつねのメイクができたりと、神社訪問を盛り上げる試みにも熱心だ。実はそのうちいくつかは10年ほど前、御朱印に注目が集まったころに始まったのだとか。
年間でいろいろな行事のある子安神社だが、いちばん由緒があるのは9月の例祭だ。その期間中、秋分の日に前年の6月からその年の5月までに生まれた赤ちゃんが神楽殿で泣き声を競う泣き相撲が行われる。こちらは古くから伝わる子どもの健やかな成長を願う行事で、多い年には900人ほどの赤ちゃんが参加する。大人だけで訪れても、幼子の豊かな表情や泣き声から元気をもらえそう。
【立ち寄りスポット】目玉付きのキュートなドーナツのお店
八王子駅から徒歩7分ほどの中町付近は、多摩地域で唯一の花街として賑わっていた場所。その界隈に2022(令和4)年にオープンしたのが「桑都テラス」だ。施設名は、八王子は豊かな湧水を使った養蚕や織物が盛んで、「桑都(そうと)」と呼ばれてきたことに由来する。
黒い塀が印象的な施設には、飲食店が複数入居。ドーナツ店の『#NO NAME DONUTS(ノーネームドーナツ)』は、施設のオープンと同時にこの場所で営業を始めた。10種類から15種類が並ぶドーナツは、デコレーションとして、チョコ製の目玉を付けているところがチャーミング。いちばん人気はカラフルなチョコレートスプレーをまとわせた「ポップフル」で、パリパリしたチョコとふわっとした生地のコンビネーションが楽しい。
経営しているのは平本樹矢(しげや)さんと平本美咲(みさき)さん。ドーナツは主に樹矢さんが生地から独自に開発したもので、デコレーションも樹矢さんのアイデアをベースに2人で形にしている。
経営しているのは平本樹矢(しげや)さんと平本美咲(みさき)さん。ドーナツは主に樹矢さんが生地から独自に開発したもので、デコレーションも樹矢さんのアイデアをベースに2人で形にしている。
メインとなるイーストで膨らませたドーナツは、生地は軽めでさっくりふわふわ。甘さを控えて、油がなるべく染み込まないように配慮している。普段はドーナツを好まないという人にも食べやすいと好評だ。
「桑都テラス」にはベンチやテラス席がたくさん設置されているので、座ってドーナツを楽しめる。施設内では花街の芸者さんたちによるイベントや伝統芸能の催しも頻繁に行われ、無料や予約不要のイベントもあるので、八王子を散歩するなら「桑都テラス」のイベントスケジュールもぜひチェックして!
「桑都テラス」にはベンチやテラス席がたくさん設置されているので、座ってドーナツを楽しめる。施設内では花街の芸者さんたちによるイベントや伝統芸能の催しも頻繁に行われ、無料や予約不要のイベントもあるので、八王子を散歩するなら「桑都テラス」のイベントスケジュールもぜひチェックして!
水の流れに沿って散歩も
八王子は豊かな湧水のおかげで、養蚕や繊維産業などの地場産業として発展した。今もいくつもの湧水の名所があり、子安神社を含めた8カ所をたどる道が「湧水めぐりの道」と位置付けられている。子安神社に湧く水は、一度地下に潜って隣接する船森公園を流れ、少し離れた「東京たま未来メッセ」の敷地内にある「せせらぎ水路」を通り、最終的には浅川にたどり着いているそうだ。子安神社を訪れたら、澄んだ水の流れも追いかけてみると積もったストレスも流れていってくれるかも。
DATA
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取材・文・撮影=野崎さおり
上記の情報は2024年8月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです
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