頑張った日の後には、仕事帰りにふらっと寄り道して晩ごはんはいかが?
1人でご飯って少しハードルが高い? 実は、中央線沿線にはソロ客歓迎のお店がたくさんある。メニューの内容だったり、お店の雰囲気も優しい気遣いがいっぱい詰まっている。
毎日の通勤は中央線、きっとそんなあなたに役立つ連載だ。
最近は女性のソロ飯はもちろん、ひとり飲みをする姿もよく見かけるようになってきた。とはいえ、カウンターメインの店でのひとり飲みにハードルの高さを感じる人はまだまだ少なくないだろう。
阿佐ヶ谷は定期的にひとり飲みイベントが行われるほど、ひとり飲みを歓迎している街だ。店側も慣れているため、阿佐ヶ谷なら、今まで躊躇していたカウンターでのひとり飲みにチャレンジできそう。夫婦で営む『のみくい処 青月(あおづき)』は、こぢんまりとした店ながら、おつまみからフレンチ、パスタまでと、メニューは幅広い。ふらりとひとりで訪れる女性も多いという。
階段を上れば居心地の良い世界が待っている
店があるのは阿佐ケ谷駅の北側にある阿佐ヶ谷スターロード商店会。高架下の通りのもう一つ北側、飲み屋がひしめく路地の一角にあるビルの3階だ。入口に掲示された青い看板を目印に。
細い階段を上がっていくと突き当たりが入口。この急な階段の先に、ひとり飲みのカウンターデビューが待っている!
店に入るとすぐ、厨房に対面したカウンターが現れる。カウンターの上にはお惣菜が並ぶ。
店を切り盛りするのは、青木遼太さんと妻のあやさん。遼太さんはフレンチやイタリアン、居酒屋など、幅広く料理の経験を積み、17年前に阿佐ヶ谷でバーをオープン。その後、2019年に食事もしっかりとれる『のみくい処 青月』をスタートさせた。また、遼太さんはミュージシャンとしても活動。店内にはギターも飾られている。
「うちの店は、半数近くのお客様がひとり飲みです。ひとりで来られる女性も多いですね。元々常連さんが多いのですが、不思議なことに必ず毎晩1組以上は新規のお客様もいらっしゃいます」とあやさんが教えてくれた。そんなエピソードからも、ここなら安心して “ひとりカウンター”デビューができそうだ。
あれこれ食べたい欲を満たしてくれる3種盛をビールで
まずは、彩りも綺麗なお任せ小鉢盛でいろいろな料理を楽しみたい。ピクルスやアチャール(インドの漬物)、煮物や和え物など、3種650円と5種1000円。その日の状況によるが、日々変わる10〜15種前後の中から、オーダーしたお酒や料理とのバランス、その人の好みなどによって組み合わせを変えるようにしているとか。細やかな心遣いがうれしい。この日は左手前から時計回りにナスのアチャール、カボチャのサラダ、ホタテの佃煮の3種。
合わせるお酒はホワイトベルグの首都圏限定生ビール。コリアンダーシードやオレンジピールを使っているので、すっきりと爽やかで飲みやすく、どんな料理とも相性が良い。
自家製のリエットやカレーはワインと一緒に
2品目は食材をじっくり煮込んで作る自家製リエット。フレンチ出身の遼太さんならではの一品だ。豚で作ることが多いが、鶏やサーモンなど、時々素材に変化を加えることもあるそう。「黒牛スネの赤ワイン煮込みのような料理もあるのですが、もう少し気軽に楽しめるフレンチメニューもほしいなと思い、リエットやトリッパの煮込みを定番でおいています」と遼太さん。バゲットと一緒に楽しむリエットにはワインがよく合う。
ワインは料理に合わせやすく、気軽に飲めるものをセレクト。迷ったら、ソムリエの勉強中というあやさんに相談してみよう。
リエットに添えられたバゲットが残っていたら、スパイスを効かせたカレーもおすすめだ。ルーのみ600円でも注文できるのがうれしい。スパイスや発酵系の料理はあやさんが担当。季節のジャムから、カラスミや味噌、梅干まで、さまざまなものを手作りしている。カレーもその時々の素材に合わせてスパイスを変えるので、訪れるたびに違った味のカレーに出合える。
店主の地元愛にあふれた静岡のおでん&日本酒
遼太さんは静岡出身。遼太さんが子供の頃にいつも食べていた“しぞ〜かおでん”は、この店の名物の一つだ。おでんを店で出すことを決め、地元静岡でおでんの食べ歩きをしながら研究。こだわりのおでんを完成させた。静岡独特の黒いおでんスープに、黒はんぺんやしら焼き、しのだ巻各220円と、静岡独特のネタも揃っている。最後に振りかけるイワシ節も静岡産を使用するという静岡づくしの一皿だ。おでんにはやっぱり日本酒! 店では静岡の地酒を揃えている。
一見ハードルの高い印象がある雑居ビルの店。「うちのように狭い階段を上がっていく店って、ちょっと入りにくいですよね。でも実は、この階段のせいで酔っ払った人が入ってこない(笑)。女性ひとりでも意外と安心して飲める環境なんですよ」というあやさんの言葉は目から鱗!
ひとりで訪れたお客さんは思い思いに過ごしているそう。遼太さんとあやさんは、その人の様子を見ながら、積極的に声をかけたり、そっとしておいたり。一人ひとりとの適切な距離を測りながら、どんなふうに過ごしたいかを委ねてくれる。
ガッツリご飯が食べたい時も、軽くつまみながらお酒を楽しみたい時も、メニューのバリエーションがそれに応えてくれる。なんとも居心地の良いフリースタイルな空間だった。
食材は出合いとコミュニケーション
食材は旬やその日の状態を知るために、近隣の青果店や鮮魚店、精肉店とのコミュニケーションを大切にしながら選んでいる。オープン当初は特に意識していなかったものの、コミュニケーションをとる中で静岡の地酒や食材、料理などが徐々に増えてきたという。「今後は、地元の友人が営む精肉店とコラボレーションしてソーセージを作る予定です。静岡にある良い食材や美味しい料理を知ってもらうきっかけになれば」と遼太さん。
また、メニューの一部には親交のある千葉の農家『kiredo』の野菜を使用。ミネラルが豊富でアクが少なく、こだわって育てられた野菜はグリルや生野菜で。野菜そのものの美味しさを楽しんでほしいという。
取材・文・撮影=篠原美帆
上記の情報は2025年2月現在のものです。
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