
友人や家族など大切な方と会うときは、中央線沿線ならではの手みやげを持っていこう。
地元の素材を取り入れていたり、その土地の個性が表れていたりと、中央線の手みやげには地域の話題がたくさん詰まっている。そんな一品を持参すれば、あなたが暮らす街の話題で盛り上がるかも。
中央線沿線にお住まいの方、中央線をよく利用される方必見の連載。

阿佐ケ谷駅
阿佐ヶ谷で手みやげを買うなら、小麦が豊かに香る優しいスコーン/ザクッと豪快に頬ばりたくなるパイシューはいかが?
井伏鱒二や太宰治など多くの文人に愛された、文化薫る阿佐ヶ谷。駅周辺には阿佐谷パールセンター商店街や阿佐ヶ谷スターロード商店会など、たくさんの人でにぎわう商店街がいくつもある。街の中心となるのは中杉通り。中央線と交差して南北に走る道路はケヤキ並木で縁取られ、美しい街並みを形成している。この中杉通りの西側を沿うように走るのは松山通り。旧中杉通りとも呼ばれ、中杉通りが整備される前はこちらが目抜き通りだったそう。ちょっと懐かしい雰囲気もある通りには、昔ながらの店と新しい店が入り混じる。今回はこの松山通りで手みやげ探し。菓子作りに丁寧に向き合う菓子職人たちの想いとともに、深まる秋をあの人と感じたい。
この記事の目次
シンプルだからこそ素材の味わいが引き立つ優しい焼き菓子
rustica菓子店(ルスティカ かしてん)[焼き菓子]
商店街「松山通り交友会」のレトロなムードに馴染む古民家の店。引き戸を開けて店内へ。波ガラスに趣のあるショーケース、レトロなレジまで、統一された世界観が心地よい。店主の中井美智子さんは、古民家カフェでの菓子作りなどの経験を経て、2013年に店をオープン。
「以前ホテルでパンを作っていた時に、たくさんの小麦粉を扱っていて、幅広い魅力を実感したんです」。現在、店で使用するのは主に北海道産の、中力粉に近いしっかりとした小麦粉だが、フランス菓子にはフランス産を、また、ブレンドによってそれぞれの特性を引き上げるなど、品種や産地ごとの味や香りに合わせたレシピを考える。さらに、「文献にはスコーンの生地は練ってはダメとあったのですが、実際にはある程度練らないとキレイに割れなくて」と培った経験と勘所で、より理想に近いレシピにブラッシュアップ。
「すべての素材には性質がある」と中井さん。配合、焼き加減にもこだわり、素材の声に耳を傾けて作る菓子はどれもシンプルだが、その分ダイレクトに素材の存在を感じられる。特にスコーン260円〜は口に入れた瞬間「小麦ってこんなに美味しかったっけ?」と感じるほど! パウンドケーキ260円はしっとり、ガレット280円はほろほろと。さまざまな表情を見せてくれる。
プレゼント用には紙箱だけでなく、かわいい木箱(手提げ袋つき300円〜)の用意があるのもうれしい。
ザクザクッと香ばしいパイ生地がアクセントのシュークリーム
Cinq jours(サンクジュール)[洋菓子]
阿佐ケ谷駅から中杉通りを北に進むと、松山通りに分岐して程なく、こぢんまりとしながらも、フランスの街角を感じさせるようなパティスリーと出会う。通り沿いのショーケースを、道行く人がかわるがわるのぞいていく。
ここには以前、PÂTISSERIE TATSUYA SASAKI という店があった。オーナーシェフの佐々木さんが西八王子の本店に注力することを受け、佐々木さんのもとで菓子作りを学んだ山根克也さんが場所を引き継ぎ、2023年6月にオープンしたのがこの店だ。店頭にはTATSUYA SASAKI の焼き菓子も並び、その様子からも、師弟の絆がうかがい知れる。
店の看板商品は2種のパイシュー各420円だ。そのうちの一つ、阿佐ヶ谷パイシューは、マダガスカル産バニラビーンズを使用した香り豊かなカスタードクリームがたっぷり。生クリームを加えず、カスタードをそのまま贅沢に使用。濃厚だが甘さ控えめで、軽やかささえ感じる。一方、カスタードの上に上質な生クリームをあしらったのはサンクジュールパイシュー。品質にこだわったリッチなミルク感が加わり、こちらもまた軽やかだ。
そして特筆すべきは、シュー生地の下に敷いて高温で焼き上げたパイの驚くほどの存在感! 小規模店ゆえに作り置きせず、少しずつクリームを詰めて店頭に出す。そんなひと手間がパイのザクザク感をキープしているのだろう。パイシューにはこの2種のほか、季節のフルーツなどを取り入れたものも。
また、バスクのチーズケーキ1カット490円もおすすめだ。こちらはPÂTISSERIE TATSUYA SASAKIでも人気が高かった佐々木さん直伝のレシピで作られている。
文・撮影=篠原美帆
上記の情報は2025年10月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。



















