店内にいてなお、林の中を思わせる大きな窓が魅力的。ここは、そば界の神様・高橋邦弘氏が、国内でいち早くそばの栽培法からこだわり、自家製粉、手打ちで1986年に始めた店。師匠から引き継いだ大橋誠さんが切り盛りし、北海道、茨城、山梨など各地で収穫されたそばの実を磨き、選別し、皮剥きし、石臼挽きする。

もりそば、田舎そばから選べるが、八ヶ岳産のそば粉だけで拵えた十割そば1300円があったらぜひそれを。しなやかなそばの喉越しのあと、凄烈な香りがゆっくり鼻腔に広がっていく。そばの前に日本酒を味わいたいときには、八ヶ岳セット1950円を。湯葉、デザートも付くが、香ばしいそばの実と西京味噌の甘い香りが相まった焼き味噌が特にたまらない。また、季節のきのこつけそば1600円は、ヒマラヤヒラタケ、キクラゲなどキノコ尽くしで、山椒の芳香にもため息が出る。締めにはバスクチーズケーキ350円を。小麦粉の代わりにそば粉を用い、しっかり炒ったそば粉と、軽く炙ったそばの実がアクセント。しっとりなめらかな口溶けとザクザクした香ばしさの妙に頬が緩む。紅葉、冬木立へ移ろう景色とともに、うっとり味わいたい。