高円寺駅奥多摩駅
生まれも育ちも中央線! 中央線で醸造されたクラフトビールを堪能しよう
中央線沿線に点在する小規模ブルワリーは、新しい中央線カルチャーを築く大切な存在。元々ある中央線カルチャーに個性豊かなクラフトビールが着実に根付き、人々の日常に馴染んで広がっている。
今回は、新しい動きがある2つのブルワリーをご紹介。造り手の想いが醸し出す中央線のクラフトビールの世界へ、いざ!
この記事の目次
中央線沿線に続々と誕生する小規模ブルワリー
中央線は、都心から、サブカルチャーの色濃い街、都市農業が盛んな東京郊外を経て、山々が連なる自然の中へ。その車窓の景色が移り変わるのと同じように、中央線のクラフトビールも醸される街ごと、ブルワリーごとに、独自のカラーを感じずにはいられない。
たとえば、地元の農家さんを巻き込み、ホップや大麦、小麦栽培から手がけたり、フルーツなどの農産物を活用したりするブルワリー。深層地下水という大地の恵みを活用するブルワリーなど。それぞれのビールに、造り手の想いがたくさん込められている。
中央線や、そのカルチャーに影響を受けた青梅線を行き来するだけで、こんなにも幅広くおもしろいクラフトビールに出合えるなんて、すてき。その場で飲めるタップルームや飲食店を併設するブルワリーを訪ねれば、できたてのビールを真ん中にコミュニケーションが生まれて、人の縁だって紡ぐことがあるかも。
高円寺と勝沼、中央線で繋がる2つのブルワリー
アンドビール[高円寺駅/ブルワリー]
オーナーは安藤耕史さん祐理子さん夫妻。もともと旅行とおいしいごはんとビールが好きだった2人。祐理子さんが、『高円寺麦酒工房』を訪ねた際、自分で醸造できると知って開眼。「ビール造りに人生をかけてもいい!」と決意し、2017年に『アンドビール』の旅が始まった。
タップルーム&レストラン『高円寺タップルーム』の店内に3つのステンレスタンクを設置して、2018年3月から醸造開始。1年後には、ブルワリーをすぐ近くの中央線高架下に移転し、タンクは6つに。常に新しいビールを仕込み、これまでに200種類以上のビールを造ってきた。2021年には山梨県勝沼に第2の拠点を築き、木樽で熟成させる「バレルエイジドビール」に着手。翌2022年、同地に新しいブルワリーが完成した。
現在は、高円寺と勝沼、2つのブルワリーでビールを造っている。
写真左から
「Citrus Summer」 ビアスタイル:ヘイジーサワーIPA
「Peach Weizen」 ビアスタイル:フルーツウィートエール
「Thiol Burst!」 ビアスタイル:ヘイジーIPA
『高円寺タップルーム』には8タップを設えるが、この日、アンドビール製は3種類のみ。
「イベント出店が続いて、醸造が追いつかず品薄になっちゃって。ごめんなさい」と、代表でブルワーの祐理子さん。まさに、小規模ブルワリーならではの状況だ。
どんな味か試してみたい時は、飲み比べセットの「Beer Flight 3種類」がおすすめ。
左から、ヘイジーサワーIPAの「Citrus Summer」(醸造は勝沼工場)は、パッションフルーツ、グレープフルーツの風味がおだやかに広がる、名前の通り夏っぽいIPA。
「Peach Weizen」(高円寺工場)は、ドイツの伝統的な白ビールのスタイル、ヴァイツェンに桃のピューレを加えたもの。桃を感じるフレッシュな甘い余韻が心地よく、ビールを飲み慣れない人にもおすすめ。
「Thiol Burst!」(勝沼工場)は、白ワインのような香りと見た目では想像つかない苦みにびっくり。一見すると少し似ている3種も、飲み比べるとまったく違う味わい。クラフトビールのおもしろさここにあり!
「どんな風に仕上げたら生産者の皆さんに喜んでもらえるかな」と考えながら仕込むという。ここに集ってビールを飲む私たちは、『アンドビール』を通じて日本のあちこちの風土を感じ、旅心地になっていく。
『高円寺タップルーム』ではスパイシーなカレーを筆頭に、夫妻とつながりのある生産者から届く食材を使った日替わりメニューにも注目を。2023年5月には2号店として阿佐ケ谷駅近くに『Olla(オジャ)』を開店。こちらの看板は、創作タコスとビール。「メキシカンタコスに合うスタイルは、ラガーなんですよ」と祐理子さん。中央線沿いをてくてく、ハシゴビールもいいね!
DATA
東京の大自然の中で価値観を変えるビールを
VERTERE[奥多摩駅/ブルワリー]
「奥多摩は、東京駅からアクセスがいい場所。ここを目指して来る人が増えてとてもうれしい」と、ヘッドブルワーの辻野木景(こかげ)さん(写真左)。日本だけでなくフランスやオーストラリアなど海外から訪ね来る人も。
「Globba」 ビアスタイル:チャイラテ スタウト Half 266ml 700円
「Albizia」 ビアスタイル:ダブルIPA Half 266ml 800円
「Napiaria」 ビアスタイル:サワーセゾン Half 266ml 700円
「大切にしてきたのは、飲んだ人の価値観を変えるビールを造るということ」と、辻野さんはゆっくりと語る。飲んだ人が衝撃を受ける、生涯忘れえぬ記憶に残る、さらには人生をも変えるかもしれない、そんなビールを造りたいと願っているのだ。
「ペールエールを造るとしたら、伝統的なレシピを自分たちなりに解釈して、自分たちなりのペールエールを表現できたらいいですね」。
どのビールもネーミングからは想像できないけれど、想像するのも楽しみの1つ。
「Globba」は、インド式で淹れるチャイを使ったスタウト(黒ビールの一種)。カルダモンを筆頭にスパイス由来のさわやかさがあり、乳糖を使っているのでやや甘めの黒ビール。甘みと厚みがあるけれど、スパイスのおかげで不思議とスルスル飲める。
「Albizia」はアメリカ系のしっかり苦いIPA。モルトのニュアンスを楽しめる。タップルームのテラス席でうとうとした午後の目覚めに効きそう。
3つのスタイルの中でもっとも軽快に飲めそうな「Napiaria」は、乳酸菌の香りがあってすっきりさわやか〜と思いきや、喉を通った後の余韻の深さにびっくり。
都内から営業日を狙って通うファンがいるというが、飲むほどに通いたくなる気持ちがとてもよくわかる。
「奥多摩でブルワリーを開いたのは、この場所で飲んだビールに感動したから」と辻野さん。
同じように感動しながら、10タップからチョイスしてゆるゆると飲み、お腹が空いたらホットドッグやフィッシュ&チップスを注文して、つまみながらのんびりと過ごしたい。
DATA
中央線ビールフェスティバル
2023 Summer
~過去最多の18出店!多摩地域のクラフトビールが武蔵境に大集合!!~
昨年3年ぶりに開催し、約4万人が来場した「中央線ビールフェスティバル」が今年も開催!
出店数は過去最多の18ブルワリー、今回の特集で紹介したブルワリーも出店する。
地域と一緒に創り上げる、中央線沿線のクラフトビール熱を体感しにいこう!
【開催日時】
2023年7⽉20⽇(⽊)~7⽉23⽇(⽇)
平⽇ 17:00〜21:00(L.O. 20:45)
⼟曜 11:00〜21:00(L.O. 20:45)
⽇曜 11:00〜20:00(L.O. 19:45)
※⼩⾬決⾏・荒天中⽌
【会場】
武蔵境駅 南口からすぐ!
メイン会場:境南ふれあい広場公園
サブ会場:武蔵境nonowa Terrace
【入場料】
無料
【特設サイト】
https://chuosuki.jp/event2/chuo-beer/
取材・文=松井一恵 写真=オカダタカオ 編集=加藤有子
上記の情報は2023年5月現在のものです。
※掲載ビールは取材時のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。