頑張った日の後には、仕事帰りにふらっと寄り道して晩ごはんはいかが?
1人でご飯って少しハードルが高い? 実は、中央線沿線にはソロ客歓迎のお店がたくさんある。メニューの内容だったり、お店の雰囲気も優しい気遣いがいっぱい詰まっている。
毎日の通勤は中央線、きっとそんなあなたに役立つ連載だ。
西荻窪駅
“食べること”の楽しさを再発見させてくれる自然食ダイニング
日毎に夜風が冷たくなり、季節が一気に冬へと向かっているのを実感する日々。実りの秋の名残を味わいたくて、今宵訪ねたのは西荻窪『BALTHAZAR(バルタザール)』だ。赤レンガにツタが絡まる趣あるビルの2階。有機野菜や豊洲で買い付ける鮮度抜群な旬の魚介を中心としたヘルシーな自然食ダイニングだ。
秘密基地に潜り込むようなワクワク感
ビルの入り口。『BALTHAZAR』のメニュー黒板横には“ほびっと村学校”、“長本兄弟商会”と、なにやら気になるワードが並んでいる。
1階の『長本兄弟商会』は有機野菜を中心に、魚介や肉、調味料まで、幅広く自然食品を取り扱う店。創業は1976年。50年近く前、オーガニックや自然農法といった言葉も一般的ではなかった時代にいち早く取り組んだ先駆け的な存在だ。
店頭を覗くと彩り豊かな野菜が並んでいる。今回お邪魔する『BALTHAZAR』とは姉妹店。こちらで仕入れた野菜や魚が2階で食べられるそうだ。
目指す『BALTHAZAR』は2階だ。緩やかにカーブを描いた階段を上る。壁面には可愛らしい樹木のイラストが描かれている。
ナチュラルでシンプルな内装の店内
穏やかな笑顔で迎えてくれたのは店長の長本開(ながもとかい)さん。2001年のオープンから20年以上、メニュー開発も手がける料理人だ。
店内はオフホワイトをベースにシンプルでナチュラルな雰囲気。特別オーガニックを強調するような内装は施されていないが、それがかえって心地良かったりもする。「“外食の特別感”というよりも、この店は日常の延長線上でありたい」と長本さんが話す通り、ここではただシンプルに“素材のおいしさを味わうご飯”を楽しみたい。
シンプルだけど驚きが潜む料理の数々
最初に注文したのは野菜の小鉢3品495円。この日はカボチャのマッシュサラダに小松菜のおひたし、切り干し大根。まさに日常的な、家庭料理そのもののラインナップだ。小松菜はシャキシャキ感を残し、ほのかに香るダシをまとう。みずみずしさが全面に感じられ、「小松菜って、こんなにおいしかったんだ!」と再発見。カボチャのマッシュサラダはマヨネーズとレモンを加え、奥行きのある酸味を演出。さらに揚げたカシューナッツを混ぜることで食感にもアクセントを加えている。
日常の家庭料理もアイディア次第でこんなに素材の魅力が引き立つのかと感嘆する。
日常の家庭料理もアイディア次第でこんなに素材の魅力が引き立つのかと感嘆する。
メインに選んだのは、スモークサバのオーブン焼き フライドポテト添え880円。サバの味わいが感じられるように燻製は長くかけ過ぎず、オーブンで焼くときも火を通し過ぎないのがポイント。確かに薫香はしっかりまとっているけれど、サバの持つ甘みや旨みは失われていない。
「燻製といっても、やっぱり素材が重要なんですよね。せっかく刺身でも食べられるような新鮮な魚を使っているのだから、その良さが失われないように燻製時間や火加減を調整しています」。
そして添えられたポテトフライもカリッホクッ。1年を通してさまざまな品種が入荷するジャガイモ。この日は長崎の「デジマ」という品種を使用。その時々で違う品種が提供されるという、まさに一期一会のポテトフライだ。こんな風に“食べること”の喜びや楽しさを感じさせてくれることが、この店の魅力なのだ。
「燻製といっても、やっぱり素材が重要なんですよね。せっかく刺身でも食べられるような新鮮な魚を使っているのだから、その良さが失われないように燻製時間や火加減を調整しています」。
そして添えられたポテトフライもカリッホクッ。1年を通してさまざまな品種が入荷するジャガイモ。この日は長崎の「デジマ」という品種を使用。その時々で違う品種が提供されるという、まさに一期一会のポテトフライだ。こんな風に“食べること”の喜びや楽しさを感じさせてくれることが、この店の魅力なのだ。
「〆には是非ご飯を食べてみて」と長本さんおすすめの玄米。試行錯誤して現在の炊き方に辿り着いたというだけあって、ほのかな甘さと香ばしさ、モチッとした食感に箸が進む。プチプチとした歯応えは残しつつも適度な軟らかさがあり食べやすい。
料理の話をする長本さんは、とても楽しそう。「子供の頃は両親が共働きで。父が休みの日には父親も食事を作ってくれました。その料理がすごくおいしくて。それに台所に立つ父の姿がカッコよく見えたんです」。そのお父さまこそが、1階の有機野菜店の創業者なのだ。
その背中を見て育った長本さんも、小学生の頃から遊びに来た友達に料理を振る舞うこともあったそう。「友達が『おいしい、おいしい』って食べてくれるのが嬉しくて、その頃から料理が好きでしたね」。
生姜焼きのショウガはタレに混ぜず、調理中に擦りおろしたものを使う。2種の味噌をブレンドする味噌汁は、季節によって塩梅を変える。汗をかいてやってきたお客さんには、少し塩分を足して提供する。飲食店としては手間がかかるはずだが、その手間こそが大切だからと手を抜かない。時には失敗から新しい調理法に気づくこともあったと笑う。
本当に料理が好きな長本さんの話を聞いていたら、自分も料理をしたくなった。そうか! これがまさに“日常の延長線上”なんだ。
料理の話をする長本さんは、とても楽しそう。「子供の頃は両親が共働きで。父が休みの日には父親も食事を作ってくれました。その料理がすごくおいしくて。それに台所に立つ父の姿がカッコよく見えたんです」。そのお父さまこそが、1階の有機野菜店の創業者なのだ。
その背中を見て育った長本さんも、小学生の頃から遊びに来た友達に料理を振る舞うこともあったそう。「友達が『おいしい、おいしい』って食べてくれるのが嬉しくて、その頃から料理が好きでしたね」。
生姜焼きのショウガはタレに混ぜず、調理中に擦りおろしたものを使う。2種の味噌をブレンドする味噌汁は、季節によって塩梅を変える。汗をかいてやってきたお客さんには、少し塩分を足して提供する。飲食店としては手間がかかるはずだが、その手間こそが大切だからと手を抜かない。時には失敗から新しい調理法に気づくこともあったと笑う。
本当に料理が好きな長本さんの話を聞いていたら、自分も料理をしたくなった。そうか! これがまさに“日常の延長線上”なんだ。
年末には恒例となったおせちの販売も
毎年好評でリピーターも多いというおせちの販売。黒豆や煮しめといった伝統的なおせち料理だけでなく、年間を通して提供した料理の中から好評だったメニューも加えた“おせち&オードブルスタイル”は、長本さん曰く「1年間の集大成」。BALTHAZAR ならではの驚きや楽しみが詰まったおせちで迎える新年は、きっと良い年になりそうだ。11月中旬から予約を受け付けている。
DATA
取材・文・撮影=篠原美帆
上記の情報は2023年10月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。