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プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!
奥多摩駅
奥多摩駅から行く、夏でも清涼な東京の秘境 ・日原(にっぱら)で渓流・鍾乳洞探検
奥多摩駅からバスで約25分、山並みに沿って集落が続く東日原を抜け、さらに奥へ進めば、深山幽谷のごとし風景が現れる。山岳信仰の霊場だった鍾乳洞を中心に、自然が作り出した荒々しくも美しい世界を、じっくり探検しよう。
この記事の目次
目的地までのアクセスと歩き方
新宿駅から青梅特快約56分の青梅駅で奥多摩行きに乗り換え終点下車。平日は「鍾乳洞」行き約31分、土・日・祝は「東日原」行き約24分の西東京バスに乗り換え、終点下車。週末の終点「東日原」バス停から約2km先に、渓流釣り場・鍾乳洞・渓谷が点在する。渓流釣りする場合は、岩場で足を保護するためにも長靴が必須。鍾乳洞は洞内が通年11℃と寒く、水滴が落ち、足元が滑りやすいため、滑りにくいトレッキングシューズ、長袖、帽子を忘れずに。西東京バスは本数が少ないので、事前に時刻表の確認を。
西東京バス(路線図・時刻表)
https://www.nisitokyobus.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/04/20240401_Hiking-Okutama.pdf
日原渓流釣場[奥多摩駅/渓流釣り]
都心よりも10℃ほど涼しい水辺で渓流釣りに挑戦
受付で、貸し竿1本200円、エサ(イクラ450円、ブドウ虫500円)、入漁券3500円を手に入れたら、すぐに始められる気軽さだ。10時と13時にニジマスとイワナの放流も行っている。
小橋を渡った河原はどこも釣りのポイントで「流れが早くて水面が波立つ瀬や、淵の岩陰に潜んでいますよ」とは、スタッフの方のアドバイスだ。
ブドウ虫を針に付けたら、いざ出陣。
振り子の要領で瀬に向かって投げ、流れにまかせて竿を回すこと数度。
何度もエサを食われ、ボウズを覚悟した頃、ウキが波間に沈み、竹竿を通して微かな重みを感じた。瞬間、手首をクイッと返して、竿を引き上げると、魚鱗が空へと躍り出た。
しかも、大ぶりのニジマスだ!
捌き場に貼られた魚の捌き方指南に倣って内臓と血合を取り除き、きれいに洗ったら、塩を魚の内外にすり込む。
次は、河原の各所に置かれたコの字型のコンクリート台の焼き場へ。BBQプレートセット1500円に含まれる新聞紙を焼き台にのせて薪を数本くべ、火を熾す。置いた炭に火が移ったら、網をセットして魚を並べればいい。
焦げ付かないようこまめに魚の位置を変え、魚の両面、腹をじっくり焼くこと40分ほど。
イワナの香り、ニジマスのふくよかな旨みが、あぁ堪えられない。
聞けば、上級者向けのスポットの上流は、遊歩道から川辺に下りられるとのこと。渓流を辿ると、青き滝壺が待ち受けていた。
「天然のヤマメ、釣れましたよ」と、ホクホク顔の釣り師。
腕を磨いて、いつか自分もヤマメにお目にかかるぞと誓うのだった。
DATA
日原渓谷[奥多摩駅]
神が宿る山岳霊場の痕跡を歩く
修験道の開祖である役行者(えんのぎょうじゃ)が創始し、弘法大師が中興、慈覚大師が再興したと伝わる山岳修験者の御祈祷場だ。
そして、この神社の御窟と言われ御神体として崇敬されてきたのが、日原鍾乳洞なのだ。
日原鍾乳洞[奥多摩駅/鍾乳洞]
悠久の時が創った神秘の自然造形空間へ
盛夏であっても洞内は通年11℃。長袖じゃないととても入る勇気がもてないほどだ。
中に入れば、早速、鍾乳洞の回廊になっている。岩肌がしっとり濡れて照り、ひんやりした空気の中、あちらこちらで水が滴り落ちてくる。
水琴窟だ。
ここは弘法大師が修行した場所でもあり、近くの仏像も目を細めて聴き惚れているようだ。
さらに、昭和37年(1962年)に発見された新洞も見逃せない。
50mを一気に上がる狭くて急な階段は、振り返ると足がすくむほど。けれど、石筍や石柱が乱立する壮大な世界で、探検はまだまだ続くのだ。
DATA
暫亭(しばらくてい)奥多摩店[奥多摩駅/焼き鳥]
鶏の旨みを地酒と味わう至福の締めタイム
急な階段を下ると、階段脇の扉に暖簾がかかっている。
今や炭火でじっくりと焼き上げる焼き鳥1本230円を求める地元住民が後を絶たない。
キリッとしたタレが鶏の旨みを際立たせている。
コースに付く1品は、人気の鶏皮のポン酢和えのほか、ポテトサラダ、たたききゅうりの梅かつお和えなどから選べるという嬉しさだ。
まずは、お通しの青菜の煮浸しを摘むと、カツオと昆布の出汁をよく含んだシャキッとした歯触りが早速、青梅の日本酒「澤乃井」1合500円を呼ぶ。
焼き鳥は1本1本、順に出してくれるが、「山帰りなどでお腹が空いている様子なら、まとめて3本ほど出します。焼き鳥+ライスでまずは腹の虫を治めていただければ」と田島さん。塩と炭が引き出す新鮮な国産若鶏の香味は噛むほどに濃く口中に溢れ、酒で流す時間が至福だ。
最後の一滴まで飲み干せば、お腹の底からじんわり温まり、心も満たされる。
修験者たちが通った秘境は都内とは思えぬ世界
本数が少ないとはいえ、バスで出かけられる日原。晴天の日は空と緑が美しいが、曇天の日は層雲が山にたなびき、中国奥地を訪れた気分。しかも、荒々しくダイナミックな自然の造形は神が宿るようだ。東日原バス停周辺の隠れ山里風情、約2kmの道中、水辺、鍾乳洞と、景観は表情を変え、気持ちよさに背筋も伸びる。
取材・文=林 さゆり 撮影=逢坂 聡
上記の情報は2024年7月現在のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
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