武蔵境駅
【1日目】中央線ビールフェスティバルのブルワリーを全制覇 ~個性豊かなクラフトビールの魅力を再発見~
居酒屋に入るやいなや、脊髄反射レベルで「とりあえずビールお願いします」とオーダーしていたコロナ禍前のわたし。そんなビール好きライターがコロナ禍の在宅暮らしを充実させようと手に取ったのが、醸造家の個性が存分に発揮される「クラフトビール」でした。
原料使いのアイディアが意外性に満ちており、ブランディングも鮮やかでユニーク。国内ビール大手4社の製品とは異なるクラフトビールの魅力を知り始めた矢先、3年ぶりに「中央線ビールフェスティバル」がリアル開催されることに。「これは行くしかない!」と鼻息荒くJR武蔵境駅前の会場を訪れると、バラエティ豊かな15のブルワリーが出迎えてくれました。
ブルワリーを全制覇すべく、3日間にわたってフェスをレポート。各ブルワリーのクラフトビールが飲める・買える店舗も紹介します。フェスに行った人も行けなかった人も、中央線沿いブルワリーの“とっておきの1杯”を、お店に飲みに行きましょう!
この記事の目次
JR武蔵境駅前に15ブルワリーが揃い踏み
パイオニア精神で開拓するハニービールの可能性
HONEYCOMB&HOPWORKS[東中野駅]
Honeycomb Bullet(スペシャルティハニービール、ABV5.0%)
記念すべき1杯目には、事前取材の段階から気になっていた『HONEYCOMB&HOPWORKS』のハニービールをチョイス。ビールの主原料である麦芽・ホップ・水・酵母に「蜂蜜」を加えた新しいスタイルのクラフトビールです。いざ、ハニービールデビュー!
ブルワーの木下祐斗さんがオススメしてくれた定番ビールのうち、今回はすっきりとした飲み口のHoneycomb Bullet(ハニカムバレット)をいただきました。ライチの花から採った蜂蜜と高級ホップのザーツが醸すフローラルな香りが特徴だそう。マスクを外して香ってみると華やかなアロマが鼻をくすぐります。蜂蜜特有の甘みは舌に残りませんが、奥の方にしっかり風味を感じることができました。
地元産の原料を活用した飲みやすいクラフトビールを
26K Brewery[武蔵境駅]
Mr. SAKAI(黒)(DARK SPICE ALE、ABV4.5%)
続いては「中央線ビールフェスティバル」の“お膝元”といえる武蔵境のブルワリー、『26K(ニーロクケー) Brewery』のブースを訪れました。刺激的な1杯を求めて選んだのは、武蔵境産のトウガラシを使った定番のスパイスエール、Mr. SAKAI(黒)。焙煎した麦芽を投入し、ライトな香ばしさを演出したそう。辛さが苦手な人でも安心して楽しめるよう、トウガラシのうまみを引き出したとか。
口に含むと、辛さは感じないものの舌先にピリッとするトウガラシ感が! 先に飲んだ編集Hさんが「喉のあたりが温かくなってきました」と言うと、友人Nさんが「スリミングジェルを塗ったところがポカポカする感じ?」と言語化のナイスパスを投げてくれました。遅れてわたしの喉元にも、じんわりとした温かさが到来。同じ1杯を誰かと共有する楽しさを実感します。
『26K Brewery』の母体は広告制作会社。2018年にビール事業を立ち上げ、地元産の原料を活用したビールを数多く生産しています。カフェ併設のブルワリーにはクラフトビール初心者がよく訪れることから、責任者の平槇駿一さんは「飲み疲れしないビールを醸造しています」と話してくれました。
番外編! 駅員と地域住民が育てたホップでつくる「ぽっぽやエール」
海外の方が喜ぶパンチあるビールづくりを
Fat Barley Brewing[福生駅]
HOP’N ROLL(WEST COAST IPA、ABV7.0%)
プレーンで飲みやすいぽっぽやエールの次に、飲もうと思い出したのは、事前取材でうかがった『Fat Barley Brewing』ブルワー・森慶太郎さんの「お酒に強い海外の方に喜んでいただけるようなパンチあるビールづくりを心がけています」というコメントでした。目指すはクラフトビール初心者からの“脱皮”です。
モルトとホップとイーストをバランスよく配合し、飲みやすさを意識したというHOP’N ROLL(ホップンロール)を前に“脱皮”の覚悟が揺らぎます。ビールリストを見ると、苦味の基準値である「IBU」の数値が「36」とけっこう高い──。日本のビール大手4社による製品の平均的なIBUが「20前後」といわれているなかで、わたしの子ども舌は果たして順応するのでしょうか?
思い切って飲んでみると、鼻を通るホップの香りが意外なほど芳しい! ガツンとした苦味のパンチを喰らう一方で、飽きの来ないスタンダードな余韻を感じます。森さんの職人魂に触れ、編集Hさんは「クラフトビールを飲んでいる!って気持ちにさせてもらえる1杯だなぁ」と感激しきりでした。
自然の中で味わうクラフトビールは格別
VERTERE[奥多摩駅]
COMMELINA(TABLE SAISON、ABV3.5%)
初日のラスト1杯は、JR 青梅線の終着点である奥多摩駅にほど近い場所に醸造所を構える『VERTERE』へ。「奥多摩には気軽に行けないから」と誘い合う来場者が多く、ブースは常に行列でにぎわっていました。
同じ奥多摩を拠点にフードトラックで出店している『わさび食堂』のわさび丼をビールに合わせたいと伝えたところ、オススメしてくださったのは低アルコールセゾンCOMMELINA(コメリナ)。フローラルな中に柑橘を思わせる香りが感じられ、最後には辛くスパイシーさが残ります。飲み心地はとても軽く、何より爽やか! クラフトビール単体で存分にニュアンスを楽しんだあと、わさび丼がどんどん進みました。主役を張れるし脇にも徹することができる万能な存在感、店舗や通販でもぜひ味わってみてください。
奥多摩駅前の『Bottle Shop』では、自社製の缶ビールやオリジナルグッズの取り扱いも。場所柄、登山やハイキング帰りに調達して折り返しの列車に乗り込み、ゆったり味わいながら旅路を振り返ってみては。
明日もクラフトビールで燃料チャージ
初日は、4つのブルワリーのとっておきの4杯と、駅員さんと地元の人でつくるクラフトビールに出合えました。
また会場では、人が入れ替わったのを見計らってはテーブルをアルコール除菌し、ゴミ箱や集積所を清潔に整える専任スタッフの活躍も。一人でじっくり味わう自宅飲みも豊かだけれど、ブルワーさんやイベントスタッフ、隣り合わせた来場客など「他者」の存在を感じながら屋外で楽しむクラフトビールは格別です。この空間から、また明日もエネルギーをもらおう。そう再訪を誓って追加購入した回数券を握りしめ、中央線から帰途についたのでした。
★イベントレポート【2日目】に続く
取材・文・撮影(ビールフェスティバル会場)=岡山朋代
上記の情報は2022年7月現在のものです。
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