居酒屋やカフェのメニューにも並び、コンビニのドリンクコーナーでも見かけるようになったクラフトビール。これまでは飲食店で飲む機会が多かったけれど、クラフトビール専門のボトルショップやタップルームでのテイクアウトなど、楽しみ方の選択肢も増えている。
お気に入りの一杯を見つけたら、自宅で飲み比べをしてみたり、キャンプやBBQで仲間と持ち寄って楽しんだり。テイクアウトで、さらに奥深いクラフトビールの世界を探求しよう!
テイクアウトで広がるクラフトビールの世界
クラフトビールをテイクアウトするには、大きく分けて二通りの方法がある。
ひとつ目は缶や瓶の購入。クラフトビール専門のボトルショップや酒販店、コンビニなどで購入できる。なかでも専門のボトルショップは、幅広いラインナップが大きな魅力だ。店内POPを頼りに気になるビールを見つけるのも良いだろう。またクラフトビールにも詳しいお店のスタッフに、相談するのも良し。たくさんの選択肢の中から、より好みに合った1本にきっと出合えるはずだ。
もうひとつは「グラウラー」でのテイクアウト。
グラウラーとは、ビールやジュースなどの炭酸飲料に対応したボトルのことだ。バーやタップルームなどでは、店内用のビールを提供しているタップから、持参したボトルに注いで量り売りしてくれる店がある。店内で飲んで気に入ったビールを持ち帰ったり、ビールと相性の良い料理も一緒にテイクアウトしたり。ブルワリーに併設したタップルームなら、作りたてのフレッシュなビールを購入! なんてことも。
場所を選ばないテイクアウトだからこそ、ひとりでも仲間とでも、大切なあの人とでも。さまざまなシチュエーションで、もっと自由にクラフトビールを楽しめるのだ。
国内外の厳選クラフトビールが約180種
Ben's Slop Shop 吉祥寺[吉祥寺駅/ボトルショップ]
アンティークボタンの専門店や味噌の量り売り、絵本の世界のようなカフェなど、個性的な店が軒を連ねる吉祥寺中道通り。そんなユニークな商店街の一角にあるのがクラフトビール専門店『Ben's Slop Shop(ベンズスロップショップ)』だ。
ブルーの差し色が印象的な白壁や、特徴的な曲線が地中海を思わせる店構え。架空の“液体の宝石(=クラフトビール)商”をコンセプトとしたこの店は、ユニークな商店街に溶け込んでいる。
アメリカやカナダ、ベルギー、日本など、さまざまな国のビールが約180種。どれもデザインが個性的で、まるでギャラリーのよう。1本1本眺めているだけで、あっという間に時間が過ぎていきそうだ。
『Ben's Slop Shop』のクラフトビールは、無作為に並べられているわけではない。陳列は大まかにスタイルによって分けられている。この陳列ルールがわかれば、求めている味わいへのアクセスが格段に早くなる。
左ブロック
>ホップが主役のIPAなど、現在のクラフトビールの主流となる系統。
「IPA.27 Peak To Peak」473ml 1040円
ブルワリー:Collective Arts(カナダ)
アルコール度数:7.0%
スタイル:ウエストコーストIPA
シトラス系の香りにトロピカルな風味。後味にすっきりとした苦味がある。
中央ブロック
>特徴的な酵母を使ったフルーティな香りのもの、乳酸菌など発酵由来の個性を持つビール。ベルギービールやドイツのヴァイツェンなど。
「ひみつのしゅわしゅわデラウェア」375ml 2030円
ブルワリー:ひみつビール(日本)
アルコール度数:5.0%
スタイル:ワイルドエール w デラウェア
ワインを搾った後のデラウェアの皮を使用したビール。口に含んだ瞬間にふわりと広がるデラウェアの香りがまるでワインのよう。後味にはほんのりとした苦味。瓶内で2次発酵をさせ、味わいの変化を楽しむこともできる。
右ブロック
>上段は新入荷コーナー。その下はモルトが主体のビールで上のほうは淡色のラガー系が多く、下にいくほど色も濃くどっしりとした味わいのものをそろえている。
「Czech Pils」473ml 1100円
ブルワリー:Bellwoods(カナダ)
アルコール度数:4.5%
スタイル:チェコスタイルピルスナー
爽快で軽やかな飲み口のチェコスタイル。麦の香ばしさとキリッとした後味で、ゴクゴクと飲み干せる。
味の好みは感覚的なもの。幅広い知識を持つスタッフとコミュニケーションを図りながら明確化していけば、お気に入りの1本が見つかりそうだ。
気になる1本が見つかれば、店内で試してみることも可能(別途、抜栓料200円〜)。実際に飲んだものを基準として、よりピンポイントに好みに近づくことができるはず。
また、店内ではドラフト(樽出しビール)もタップで提供している。タップは7種類あり、店内のみでなく、グラウラーでのテイクアウトも可能だ。
店頭ではガラス製のグラウラーを販売。現在のグラウラーはほとんどがステンレス製のため、ガラス製は珍しいようにも思えるが「かつてはガラス製が主流だったんですよ」と教えてくれたのはオーナーの村越剛人さん。グラウラーは長期保存を目的とはしていないため、一度に飲み切れる量を持ち帰ることがオススメ。
ビールと一緒に料理もテイクアウト
柴田屋酒店 西荻[西荻窪駅/ビアバー]
1935(昭和10)年に創業の卸酒屋『柴田屋酒店』と、店内醸造のできたてビールを提供するブルワリー『ビール工房』のハイブリット店『柴田屋酒店 西荻』。駅から続くアーケード商店街の中にあり、雨でも濡れずにビールにありつける。
テイクアウトはグラウラーでの量り売りで提供している。
「グラウラーでのテイクアウトのコツは、あらかじめグラウラーの内部を氷でしっかりと冷やしてからビールを注ぐこと」と加藤鈴奈(れいな)店長(左)。保冷が効く分、一度中がぬるくなってしまうと冷えにくい。だからと言って、冷蔵庫に入れてもグラウラーの中は冷えないのでご注意を! 店舗では提供前に必ずグラウラーを氷で冷やしているそうだ。
店舗では、ビール工房のオリジナルグラウラー全5色・500mlを各2200円で販売している。デザインも可愛らしく、外飲みに持っていくのも楽しそう。ビールは500ml935円〜。
さらに、店内で3000円以上飲食すれば、ビール工房のオリジナルグラウラー限定で、なんと自社製ビール1本分を無料で詰めてくれる。当日のグラウラー購入でも持参でもOK。
もちろん、テイクアウトだけなら他のグラウラーでもOKだ。今日に限って持ってない! そんなときには、ペットボトルに詰めてくれるサービスも! こちらは500ml容器代込み1045円。
自社製ビールは、中野や新宿、高円寺、荻窪など、中央線沿線を中心とした全部で8店舗ある系列店で各々醸造。店内では系列店舗から届く自社製6~8種をはじめとした10種のクラフトビールを提供している。
左から
「<西荻限定>れいなのセゾン」HALF 770円/PINT1210円
アルコール度数:5.4%
スタイル:アメリカン・ベルゴスタイル・セゾン
西荻店長加藤鈴奈さんが新中野にある醸造所「ZERO LABO」で仕込んだキリッと辛口ドライ。苦味がきいた一杯。
「Grass Hopper IPA」HALF 770円/PINT1210円
アルコール度数:6.5%
Hazy IPA
しっかりしたボディにクラフトビールらしい華やかなホップのアロマ。飲み応え抜群の定番の味。
「19:00のフレンチセゾン」HALF 660円/PINT1100円
あるコース度数5.0%
スタイル:セゾン
酵母由来のオレンジやスパイスを思わせるアロマと程よい麦の余韻。すっきり辛口のセゾン。
「サニーゴールド」HALF 770円/PINT1210円
アルコール度数:5.2%
スタイル:ゴールデンエール
”Japan Great Beer Awards”の金賞を受賞した定番ビール。香りが華やかで、程よい苦味が感じられる。飲み飽きないので最初の一杯にもおすすめ。
店舗には醸造施設が隣接している。こちらでもビールを仕込むが、生産量が少ないため店内のみでの提供だ。
また、この店の強みは自社製ビールと一緒に料理もテイクアウトできる点にある。ビール衣のフィッシュ&チップス(ハーフ)869円(写真中央)や辛さがクセになるバッファローチキン5本入り759円などがテイクアウトOK。もともとビールとの相性を考慮したメニューだから、合わないはずがない!
ブルワリー直結のフレッシュBeer
Sakamichi Brewing[立川駅/タップルーム]
日本国内のブルワリー(クラフトビール醸造所)は2024年5月現在、800軒を突破。なかでも東京都には100軒以上のブルワリーが存在する。中央線沿線にも多くのブルワリーがあり、個性あふれる多種多様なビールが誕生している。
2020年3月にオープンした『Sakamichi Brewing』は、イギリス出身のマシュー・ボイトンさん(右)とアメリカ出身のダニエル・ベラミーさん(左)の二人が共同設立したマイクロブルワリー(小規模なビール醸造所)だ。趣味の自転車旅行で意気投合した二人は、自分たちのブルワリーを立ち上げ「坂道」という名前をつけた。それはアップダウンのあるサイクリングロードを意味し、同時に“紆余曲折”があったブルワリーづくりも意味しているのだとか。
こちらもグラウラーでのテイクアウトが可能。
マシューさん曰く「ボトル選びのコツは、気密性の高い頑丈なものを選ぶこと」。キャップは回すタイプよりも、留め金でカチッと蓋をするものがより好ましいそうだ。せっかく出来立てのフレッシュなビールを味わえるのだから、できるだけその状態を保てるものを使いたい。
オリジナルのグラウラーは900ml 8000円にて販売している。アウトドアにも向いていそうなしっかりとしたつくりのボトルだ。
また、店内には国内外のブルワリーのボトルビールも販売している。二人が信頼を寄せるブルワリーを厳選しており、ブルワリーの個性も楽しんで欲しいという。
タップルームの奥にある醸造室では、3本のタンクが稼働中。醸造途中のビールを注ぎ、色や濁り、香りなどをチェック。毎日欠かさず記録をつけるのだそう。こうやって飲み頃になるのを待ちながら、最高のタイミングでフレッシュなビールが楽しめるのは、ブルワリー直結のタップルームならでは!
『Sakamichi Brewing』で大切にしているのは「飲みやすさ」。初心者でも楽しめるビールを意識しているそう。
「日本のクラフトビールのアルコール度数は最近高くなってきていて、今は7.5%以上のビールが多いですね。もちろん、日本のビールすべてが高アルコールというわけではありませんが、最近その数が増えているような気がします。『Sakamichi Brewing』では、ほとんどが4.5〜5.0%と度数は低め。2杯、3杯と、いろいろなビールを楽しんでもらえるように、と思っています」とダニエルさん。
左から
「クランクセッション」880円
アルコール度数:4.5%
スタイル:ヘイジ―セッションIPA w/Yuzu
愛媛県産のユズ果汁を使った、酸味が引き立つフルーティな一杯。
「柴崎セッション」880円
アルコール度数:4.3%
スタイル:セッションIPA
飲みやすさが特徴の坂道ブルイング定番ビール。柑橘系の爽やかな香りが印象的。
「ラ・ドイエン」880円
アルコール度数:5.0%
スタイル:べルジャンホワイト
ピルスナーモルトとフレーク小麦を使用したベルギー風ビール。苦味は控えめ。小麦感が豊か。
「いろいろな素材を使ったビールを楽しめるのがクラフトビールの良いところ。そのうち立川名産の“ウド”のビールをつくりたいと思っています」(マシューさん)。『Sakamichi Brewing』でしか味わえないユニークなビールを持ち寄れば、パーティの席を盛り上げてくれそうだ。
中央線ビールフェスティバル2024 Summer
~地域のブルワリー・飲食店・駅・住民を結ぶ、
中央線夏の恒例ビールイベント!~
2018年の初開催から6 回目を数える、中央線の夏を彩るイベント「中央線ビールフェスティバル」が今年も開催!
出店数は過去最多の19ブルワリー。今回の特集で紹介したブルワリーも出店する。
地域と一緒に創り上げる、中央線沿線のクラフトビール熱を体感しにいこう!
【開催日時】
2024年7⽉18⽇(⽊)~7⽉21⽇(⽇)
平⽇ 17:00〜21:00(L.O. 20:45)
⼟曜 11:00〜21:00(L.O. 20:45)
⽇曜 11:00〜20:00(L.O. 19:45)
※⼩⾬決⾏・荒天中⽌
【会場】
境南ふれあい広場公園
※JR武蔵境駅南口から徒歩約1分
【入場料】
無料
【特設サイト】
https://chuosuki.jp/event2/chuo-beer/
取材・文=篠原美帆 撮影=オカダタカオ
上記の情報は2024年6月現在のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。