頑張った日の後には、仕事帰りにふらっと寄り道して晩ごはんはいかが?
1人でご飯って少しハードルが高い? 実は、中央線沿線にはソロ客歓迎のお店がたくさんある。メニューの内容だったり、お店の雰囲気も優しい気遣いがいっぱい詰まっている。
毎日の通勤は中央線、きっとそんなあなたに役立つ連載だ。
吉祥寺駅
身体の隅々までじんわりと染みわたる、オーガニック食堂の一汁三菜ごはん
和食の基本とされる「一汁三菜」。主食のご飯と汁物、主菜と副菜2品の計5品で構成する、日本で古くから伝わるバランスの良い食事スタイルだ。体に良いとはわかっていても、仕事を終えて家に帰ってから、汁物とおかず3品をつくるのはちょっと大変。そんな時に訪れたいのが、バランスの良い食事を提供する店。今回訪ねた吉祥寺『もんくすふーず』は、一汁三菜の定食を日替わりで楽しめる、通い続けたくなるオーガニック食堂だ。
創業から40年、吉祥寺の健康を支え続ける
店があるのは、井の頭恩賜公園の北側入口から程近い、吉祥寺通り沿い。茶色地に白い文字で描かれた大きな看板が目印だ。
創業は1983年。なんと40年以上もこの場所で、定食屋を営んでいるという。
創業以来、自然食にこだわり、添加物や保存料を使わず、米や野菜も極力無農薬、有機栽培のものが使用されている。
創業以来、自然食にこだわり、添加物や保存料を使わず、米や野菜も極力無農薬、有機栽培のものが使用されている。
ドアの前にはその日のメニューを掲示。手書き文字がなんとも味がある。メニューは3種類。①は主菜が野菜料理、②は魚料理、③は肉料理で、それぞれ日替わりで用意されている。ランチは900円、ディナーは1080円という料金も良心的だ。
おひとり様ならカウンターへどうぞ
店に入ると目に入るのはカウンター席。一人客はこのカウンターに、二人以上なら2階のテーブル席へと案内される。隣もみんなおひとり様。そう思えばソロ飯ビギナーも気兼ねなく過ごせそうだ。
カウンター奥に設えられた棚にはCDがずらり。ゆったりとしたジャズの音色が居心地の良さを演出してくれる。
40年という長いキャリアが紡いできた素材との対話
今回は野菜の定食をチョイス。5つの皿を並べてみると、彩りの美しさが食欲をそそる。
「価格を抑えることも考えると、どうしても100%完全無農薬というわけにはいきませんが、極力無農薬、有機栽培のものを選んでいます」と店主の小林さん。複数の仕入れ先を確保し、良いものを選ぶようにしているそう。仕入れた野菜は一つひとつ丁寧に泥を落とし、下処理をしていく。手間はかかるが、安心して口に運べるものを提供したいという小林さんの思いが日々の習慣になっている。
「価格を抑えることも考えると、どうしても100%完全無農薬というわけにはいきませんが、極力無農薬、有機栽培のものを選んでいます」と店主の小林さん。複数の仕入れ先を確保し、良いものを選ぶようにしているそう。仕入れた野菜は一つひとつ丁寧に泥を落とし、下処理をしていく。手間はかかるが、安心して口に運べるものを提供したいという小林さんの思いが日々の習慣になっている。
野菜料理の定食はヴィーガンにも対応。野菜用には昆布や椎茸からダシをとり、肉や魚料理用にはカツオダシを使うなど、丁寧に使い分けている。これは味噌汁も同様。そのため、味噌汁も2種類作っているのだとか。
この日の主菜は里芋と冬瓜のきのこ煮。素材そのものの味わいや甘さ、食感などを損なうことなく、丁寧に調理されているのがわかる。冬瓜など、一人暮らしでは買うのをためらってしまいそうな旬の野菜が味わえるのも嬉しい。
この日の主菜は里芋と冬瓜のきのこ煮。素材そのものの味わいや甘さ、食感などを損なうことなく、丁寧に調理されているのがわかる。冬瓜など、一人暮らしでは買うのをためらってしまいそうな旬の野菜が味わえるのも嬉しい。
ほっくりと炊いたカボチャも優しい味わい。
ご飯は馴染みの精米店から取り寄せた信州安曇野の玄米と、七分づきの米の2種から選べる。玄米はやや柔らかめに炊かれ、プチプチとした玄米独特の食感が楽しめる。
付け合わせの小鉢は雪菜の胡麻和え。あまり馴染みのない葉菜だが、これは山形の伝統野菜。その名の通り、雪の中で成長するという珍しい野菜だ。
付け合わせの小鉢は雪菜の胡麻和え。あまり馴染みのない葉菜だが、これは山形の伝統野菜。その名の通り、雪の中で成長するという珍しい野菜だ。
今回紹介したのは野菜の定食だったが、魚は天然、鶏は平飼いのものを使うなど、どの定食も素材と丁寧に向き合っている。40年という長いキャリアが素材の声を聞き、どう調理すべきかを感じ取る。だからこそ、どの料理も素材そのものが持つ味や食感がしっかりと引き立ち、食後の満足感も高い。
小林さんの作る一汁三菜は、じんわりと身体に染みわたる。疲れたな、と感じた日にはつい足が向いてしまう、そんなオーガニック食堂だ。
小林さんの作る一汁三菜は、じんわりと身体に染みわたる。疲れたな、と感じた日にはつい足が向いてしまう、そんなオーガニック食堂だ。
自然食は中央線カルチャーともリンク!?
「40年前だと自然食を出す店は珍しかったのでは?」と店主の小林さんに尋ねると、過去にこの連載で紹介した『でめてる』(国分寺)や『BALTHAZAR(バルタザール)』(西荻窪)もほぼ同時期にオープンした自然食の店なのだと教えてくれた。音楽や映画、サブカルチャーなど、独特な文化が根付く中央線沿線。実は“自然食”も中央線文化を彩るキーワードの一つだったようだ。
DATA
取材・文・撮影=篠原美帆
上記の情報は2024年1月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。