国立駅
【大人の工場見学】クラフトビールってどうやってできるの?
作り手の自由な発想でレシピを構築し、街中の小空間で醸造する。
マイクロブルワリー(小規模なビール醸造所)が増え続けている今だからこそ、改めてクラフトビールについて知っておきたい。ビール作りについて、『KUNITACHI BREWERY』の醸造長、しわさんに聞いてみた。
クラフトビールの醸造現場に潜入
ガラス戸の向こうに銀色のタンクが林立している。
国立の老舗酒屋『せきや』により、2020年11月に誕生した『KUNITACHI BREWERY』の醸造現場に特別に入らせてもらうと、巨大な仕込みタンクに加え、発酵用タンクが整然と並び、美しい。
醸造長の斯波さん(通称、しわさん)は「うちは年間、60㎘以上を製造するビールと、6㎘以上の発泡酒、2つの酒造免許をもつブルワリー(醸造所)です」と話し、「仕事の7割は掃除なんですけどね」と笑った。
国立の老舗酒屋『せきや』により、2020年11月に誕生した『KUNITACHI BREWERY』の醸造現場に特別に入らせてもらうと、巨大な仕込みタンクに加え、発酵用タンクが整然と並び、美しい。
醸造長の斯波さん(通称、しわさん)は「うちは年間、60㎘以上を製造するビールと、6㎘以上の発泡酒、2つの酒造免許をもつブルワリー(醸造所)です」と話し、「仕事の7割は掃除なんですけどね」と笑った。
しわさんは、発酵文化を学ぶ中で、ビール工場にどっぷりはまり、クラフトビールの世界に飛び込んでいった。「ビールは微生物たちの元気な活動が要。タンクの中がちゃんと掃除されてないと発酵がうまくいかないんです」と表情を引き締める。
ビールの仕込みは1日がかりだ。
粉砕した麦芽(モルト)を、湯を張ったタンクで糖化し、甘い麦芽のおかゆを作る。次に真ん中のタンクでおかゆを搾り、濾過した液体にホップなどを加えて煮沸。最後に、ホップなどを沈殿化させて濾過。透明度の高い麦汁が、ビールの元になる。
粉砕した麦芽(モルト)を、湯を張ったタンクで糖化し、甘い麦芽のおかゆを作る。次に真ん中のタンクでおかゆを搾り、濾過した液体にホップなどを加えて煮沸。最後に、ホップなどを沈殿化させて濾過。透明度の高い麦汁が、ビールの元になる。
麦汁を発酵タンクに移し、酵母を入れれば、1ヶ月ほどで飲み頃を迎える。
「発酵は微生物任せです」としわさんは話すが、比重と炭酸糖度を計測し、データを記録。発酵具合をチェックすることは欠かせない日課だ。
日本でクラフトビールが広まったきっかけは、1994年の酒税法改正。日本各地にマイクロブルワリー(小規模ビール醸造所)が誕生し、原料、レシピ、仕込み方など、欧州スタイルを取り入れた手作り(クラフト)ビールの歴史が幕を開けたのだ。
しかし、“地ビール”ともてはやされたブームが衰退し、淘汰が繰り返される。
再び日の目を見たのは、2015年頃からだ。
というのも、2000年以降のアメリカでレシピがブラッシュアップされ、ビアスタイルが拡充。“クラフトビール”という言葉が生まれ、世界的なブームとなって日本にも流入したのだ。
「発酵は微生物任せです」としわさんは話すが、比重と炭酸糖度を計測し、データを記録。発酵具合をチェックすることは欠かせない日課だ。
日本でクラフトビールが広まったきっかけは、1994年の酒税法改正。日本各地にマイクロブルワリー(小規模ビール醸造所)が誕生し、原料、レシピ、仕込み方など、欧州スタイルを取り入れた手作り(クラフト)ビールの歴史が幕を開けたのだ。
しかし、“地ビール”ともてはやされたブームが衰退し、淘汰が繰り返される。
再び日の目を見たのは、2015年頃からだ。
というのも、2000年以降のアメリカでレシピがブラッシュアップされ、ビアスタイルが拡充。“クラフトビール”という言葉が生まれ、世界的なブームとなって日本にも流入したのだ。
同時に、モルトやホップの種類も増加する一方だ。
温度や湿度管理を徹底した保管庫を用意する『KUNITACHI BREWERY』では、モルトだけでも50種揃えるというから驚く。
麦の品種、焙煎具合が多彩で、甘味、苦味、香ばしさ、コクなど、特徴を捉えて組み合わせるという。
また苦味を醸すホップも50種以上もち、品種違いだけでなく、生産国や地方でも異なる香りを使い分ける。
しわさんは、多彩な材料の組み合わせを頭の中でシミュレーションし、レシピを作り、ビールのスタイル、味を決めている。
材料の構成は門外不出かと思いきや、「ホームページ上で公開していますよ。同じ材料で作っても、設備、環境、人次第で同じものは作れないですから」と自負する。
温度や湿度管理を徹底した保管庫を用意する『KUNITACHI BREWERY』では、モルトだけでも50種揃えるというから驚く。
麦の品種、焙煎具合が多彩で、甘味、苦味、香ばしさ、コクなど、特徴を捉えて組み合わせるという。
また苦味を醸すホップも50種以上もち、品種違いだけでなく、生産国や地方でも異なる香りを使い分ける。
しわさんは、多彩な材料の組み合わせを頭の中でシミュレーションし、レシピを作り、ビールのスタイル、味を決めている。
材料の構成は門外不出かと思いきや、「ホームページ上で公開していますよ。同じ材料で作っても、設備、環境、人次第で同じものは作れないですから」と自負する。
国立の風景に想いを馳せたくなる、独自の造り
『KUNITACHI BREWERY』のビールはアルコール度数を低めにしたやさしい飲み心地が印象的だ。
「地元の人に飲んでもらうことが大事。飲み疲れせず、何杯でも飲めるビールにしたいと考えました」。
地元食材を用いるなど地域性をアピールするブルワリーが多いなか、ここでは街のイメージからビールの味を作ることにこだわる。
国立市は、国立駅を中心とした新しい地区と、谷保のような歴史のあるのどかなエリアが、狭いエリアに同居し、二面性をもっている。その中間地点に立つブルワリーだからこそ、「国立の街を思わせる何か仕掛けがあったら」と、コンセプトに“古いは新しい”を掲げたという。
「地元の人に飲んでもらうことが大事。飲み疲れせず、何杯でも飲めるビールにしたいと考えました」。
地元食材を用いるなど地域性をアピールするブルワリーが多いなか、ここでは街のイメージからビールの味を作ることにこだわる。
国立市は、国立駅を中心とした新しい地区と、谷保のような歴史のあるのどかなエリアが、狭いエリアに同居し、二面性をもっている。その中間地点に立つブルワリーだからこそ、「国立の街を思わせる何か仕掛けがあったら」と、コンセプトに“古いは新しい”を掲げたという。
そこで、国立駅の駅舎の創建年を冠した定番ビール“1926”のスタイルに選んだのが、エール系とラガー系の両方いいとこ取りしたケルシュスタイルだ。ラガーより香りが華やか、エールの中ではきれいな仕上がり。
「国立の新旧のエリアが混在する二面性を表現しました」。
「国立の新旧のエリアが混在する二面性を表現しました」。
他にも、国立の名の知れた通り「富士見通り」の未知なる可能性を、華やかな香りとビターな味わいをもつWest Coast IPAで表現した“富士見通りStruttin’”、旭通りのアサヒから太陽、柑橘と連想し、多彩な柑橘の香りが重層的に広がるAmerican IPA“旭通りCru sin’”など、飲む楽しみは尽きない。
しわさんは音楽の道を志したこともあるアーティスト肌。「空想や想像をビールから広げていけたら」と、街の風景を連想したり、オマージュできるよう、味だけじゃなく、ラベルのイラストでも街を表現。
「地元の名前を冠するだけじゃない、新しい地ビールにしたいんです」。
しわさんは音楽の道を志したこともあるアーティスト肌。「空想や想像をビールから広げていけたら」と、街の風景を連想したり、オマージュできるよう、味だけじゃなく、ラベルのイラストでも街を表現。
「地元の名前を冠するだけじゃない、新しい地ビールにしたいんです」。
“古いは新しい”日本初の試みも始まっている
さらに、日本初の試みも始まっている。煮沸しないRaw Ale造りだ。
「金属製の大きな釜がない時代の造りが、ノルウェーのある地方に残っていて、10年ほど前に再発見されたんです。商業的な日本のブルワリーではおそらく初めての挑戦です」。
煮沸すると灰汁になってしまうタンパク質が、煮沸しないことで旨味となってビールの中に残り、香りも閉じ込められる。苦味よりも旨味が際立ち、複雑に風味が折り重なって骨太感もあるという。
「うちのコンセプトと同じ“古いは新しい”造りです。KUNITACHI BREWERYでは煮沸するビールと、煮沸しないビールの2種類を作っています。煮沸しないタイプのRaw Aleもこれから挑戦する機会を増やしていこうと考えています」。
「金属製の大きな釜がない時代の造りが、ノルウェーのある地方に残っていて、10年ほど前に再発見されたんです。商業的な日本のブルワリーではおそらく初めての挑戦です」。
煮沸すると灰汁になってしまうタンパク質が、煮沸しないことで旨味となってビールの中に残り、香りも閉じ込められる。苦味よりも旨味が際立ち、複雑に風味が折り重なって骨太感もあるという。
「うちのコンセプトと同じ“古いは新しい”造りです。KUNITACHI BREWERYでは煮沸するビールと、煮沸しないビールの2種類を作っています。煮沸しないタイプのRaw Aleもこれから挑戦する機会を増やしていこうと考えています」。
また、野生酵母にも挑戦している。
もともと発酵に興味を持ち、進んだ道ゆえ、しわさんは飽くなき探究心で酵母の可能性にも期待を寄せる。
「普通の酵母は活動期間が短いですが、野生酵母は活動が止まらず、1年経つとビールが全然違う表情へ育っていくんです」。
作りたてのフレッシュな香りだけじゃなく、あえてビールを熟成させて楽しむ。
そんな新たな味わい方も提案している。
もともと発酵に興味を持ち、進んだ道ゆえ、しわさんは飽くなき探究心で酵母の可能性にも期待を寄せる。
「普通の酵母は活動期間が短いですが、野生酵母は活動が止まらず、1年経つとビールが全然違う表情へ育っていくんです」。
作りたてのフレッシュな香りだけじゃなく、あえてビールを熟成させて楽しむ。
そんな新たな味わい方も提案している。
隣接する『麦酒堂KASUGAI』でフレッシュな味を楽しむ
古民家の廃材を用い、一から建てた威風堂々とした木造建築が、暖簾先から風情を漂わせている。
軒下のテラス席も心地いいが、タップが並ぶカウンター席は一人客には特等席。
ブルワリーに隣接するだけあって、昼からガンガンビールをオーダーする猛者が多い。
軒下のテラス席も心地いいが、タップが並ぶカウンター席は一人客には特等席。
ブルワリーに隣接するだけあって、昼からガンガンビールをオーダーする猛者が多い。
料理の旨みを底上げする定番の1926に加え、IPA、Ale、Altなど、オリジナル10種とゲストビール2種、計12種がタップでつながり、訪れるたびに違うスタイルに出合えるのがうれしい。4種類飲み比べできるビアフライト1800円もある。
また、和のエッセンスを取り入れた料理にも力を注ぐ。
脂身がさっぱりとした北秋田産桃豚や、天然マグロに似た風味をもつ伊達マグロなどもあるが、大赤エビの出汁と青のりの風味がこたえられないアヒージョは、バゲットをオイルに浸せばビールが進んで仕方なし。分厚さに仰天する豚バラ肉ローストは、柔らかな肉質から溢れ出る濃厚な肉汁がビールを誘う。
脂身がさっぱりとした北秋田産桃豚や、天然マグロに似た風味をもつ伊達マグロなどもあるが、大赤エビの出汁と青のりの風味がこたえられないアヒージョは、バゲットをオイルに浸せばビールが進んで仕方なし。分厚さに仰天する豚バラ肉ローストは、柔らかな肉質から溢れ出る濃厚な肉汁がビールを誘う。
角煮やフライの衣に用いるだけでなく、スイーツにビールを用いるのもユニーク。プリンの軽やかな口当たりにビールが隠れていたり、ショコラにザクザクと歯触りのいいモルトを振りかけたり。
「スイーツに、ホオズキを使用したセゾンビールを合わせるのもいいですよ」と、小林さんの勧めで試してみれば、甘酸っぱいビールがスイーツの甘味と香りを引き立てるから不思議。組み合わせの妙を楽しみたい。
「スイーツに、ホオズキを使用したセゾンビールを合わせるのもいいですよ」と、小林さんの勧めで試してみれば、甘酸っぱいビールがスイーツの甘味と香りを引き立てるから不思議。組み合わせの妙を楽しみたい。
中央線ビールフェスティバル
~地域のブルワリー・飲食店・駅・住民を結ぶ、
中央線夏の恒例ビールイベント!~
2018年の初開催から6 回目を数える、中央線の夏を彩るイベント「中央線ビールフェスティバル」が今年も開催!
出店数は過去最多の19ブルワリー。今回の特集で紹介したブルワリーも出店する。
地域と一緒に創り上げる、中央線沿線のクラフトビール熱を体感しにいこう!
【開催日時】
2024年7⽉18⽇(⽊)~7⽉21⽇(⽇)
平⽇ 17:00〜21:00(L.O. 20:45)
⼟曜 11:00〜21:00(L.O. 20:45)
⽇曜 11:00〜20:00(L.O. 19:45)
※⼩⾬決⾏・荒天中⽌
【会場】
境南ふれあい広場公園
※JR武蔵境駅南口から徒歩約1分
【入場料】
無料
【特設サイト】
https://chuosuki.jp/event2/chuo-beer/
取材・文=林 さゆり 撮影=オカダタカオ
上記の情報は2024年6月現在のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。