日本ワインの礎を築いた勝沼の歴史文化を目撃
勝沼ぶどう郷駅
宮光園
日本ワインの歴史を語る上で外せないのが、日本のワインづくりの先駆け的人物・宮崎光太郎だ。彼の私邸が現在、ワイン資料館になっている。養蚕農家の2階部分を1928年(昭和3)に洋風に改修した稀有な佇まいで、上げ下げ窓が優美だ。勝沼では1877年(明治10)、日本初の民間ワイン醸造会社「大日本山梨葡萄酒会社」が誕生したが、9年後に解散。宮崎は、渡仏した技術者、ワインの醸造器具などを引き継いだ甲斐産商店を立ち上げ、さらに、父の市左衛門が自宅(後の宮光園)に設けた醸造所を1891年(明治24)に継いだという。2階はそんなワイン黎明期を伝える展示室で、醸造器具類、ワインボトル、宮崎が工夫を凝らした飲みやすい一合瓶ワイン、皇室の方々が来園された様子などを伝えている。1階に戻り、ふと神棚を見やれば、御神酒としてワインが供えられている。1899年(明治32)、祝村を中心とした醸造家たちで結成した葡萄酒飲用期成同盟会に、もちろん宮崎も参加。以来、祭り事、仏事など、常にワインを用いる習慣が根付いたのだ。さらに宮崎は客を誘致するため、観光農園、周辺景勝地と抱き合わせたツアーを考案。勝沼のブドウ&ワイン文化の事始めは枚挙にいとまがない。敷地内には和室地下の秘密の巨大貯蔵庫、甲州種の白ワイン専用醸造蔵の“白蔵”、ブランデーの蒸留用の煉瓦造りの煙突、漆喰の道具蔵なども残されている。往時の繁栄をじっくり見て回りたい。
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DATA
JR中央本線勝沼ぶどう郷駅から徒歩35分。
9時〜16時30分(受付は16時まで)、火休(不定休あり)。
入館料:200円(小・中・高・大学生は100円)
山梨県甲州市勝沼町下岩崎1741 ☎0553-44-0444
https://www.city.koshu.yamanashi.jp/map/info/2021011400281
取材・文=林 さゆり 撮影=オカダタカオ
※上記の情報は2023年8月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。