頑張った日の後には、仕事帰りにふらっと寄り道して晩ごはんはいかが?
1人でご飯って少しハードルが高い? 実は、中央線沿線にはソロ客歓迎のお店がたくさんある。メニューの内容だったり、お店の雰囲気も優しい気遣いがいっぱい詰まっている。
毎日の通勤は中央線、きっとそんなあなたに役立つ連載だ。
高円寺駅
一見さんも、常連さんもご一緒に! 隠れ家バルで広がる会話の輪
ソロ飯ビギナーにとって、カウンターで隣のお客さんに話しかけるのはちょっと勇気がいるもの。でも、常連の人たちから会話の輪に入れてもらえたら、すんなりと溶け込むことができそう。今回訪ねた舌笑(ごち)はまさにそんな店。丁寧につくられた料理とお酒。そして温かな人たちがいれば、ソロ飯の夜も楽しい時間に変わるだろう。
雑居ビルの階段を上ると、穏やかな空間が待っていた
今回訪ねたのは、雑居ビルの3階にある『舌笑(ごち)』。店にたどり着く前に立ちはだかる細くて急な階段に、もしかしたら今回はハードルが高いかも……なんて、ちょっぴり漂う緊張感。
恐る恐る店を覗くと、カウンター5席に2名用テーブルがふたつ。こぢんまりとしたスペースだ。白熱灯の温かい光に包まれた、穏やかな空気感に安堵する。カウンター奥にいたのは、この店を切り盛りする店主・野口葉月さん。この店を始めて19年になるという、気さくな女性だ。
入店はふたり連れまでということもあり、訪れるのは大半がおひとり様。ソロ飯ビギナーでも安心して過ごせるのが嬉しい。
店の名前に「おさけとごはん」とある通り、まずはお酒のラインナップに注目したい。
日本酒は宮城県の地酒を仕入れているそうで、珍しい銘柄も入荷する。こぢんまりとした店ながら、品ぞろえは充実している。
日本酒は宮城県の地酒を仕入れているそうで、珍しい銘柄も入荷する。こぢんまりとした店ながら、品ぞろえは充実している。
カウンターに置かれていたのは自家製の果実酒。写真左は広島レモンを漬けたウイスキー。カルダモンやクミンを加えてスパイシーに仕上げている。右のミックスベリーブランデーは甘さ控えめ、スッキリとした味わいだ。飲み切りで瓶の中身がなくなれば、また新しい組み合わせの果実酒が登場する。
お酒のアテから〆のごはんまで、バランスの良いメニュー
料理メニューは入口にある黒板から。にぼしの酢醤油炒りや春菊の塩昆布あえといった純和風のメニューから、白子のコンフィ、鶏の唐揚 香港風、スペアリブと舞茸の一人鍋など、レパートリーは幅広い。さらに足繁く通う常連さんのために、毎日メニューを少しずつ入れ替えているという。
野菜や魚はできるだけ旬のものを取り入れ、煮物、炒め物、揚げ物などさまざまな調理法の料理をバランスよくそろえている。
野菜や魚はできるだけ旬のものを取り入れ、煮物、炒め物、揚げ物などさまざまな調理法の料理をバランスよくそろえている。
最初にオーダーしたのはアテ3点盛り。8種の中から好きなものを3品選んで1200円とお得なセットで、どのアテを選んでも日本酒と合いそうだ。
写真手前は苺とルッコラの白あえ(単品・480円)。豆腐にイチゴを組み合わせるという大胆な発想! 豆腐には練りごまを加え、最後にアーモンドスライスをトッピング。どんな味なのか想像がつかなかったが、実際に食べてみると思った以上にクリーミーで調和の取れた一皿だった。
右奥が 菜の花のほろ苦さとエビの香りがよく合う菜の花と干しエビの焼き浸し(単品・450円)。左奥の牛肉とコンニャクのきんぴら(単品・450円)はしっかりとピリ辛で、お酒がすすむ味。
右奥が 菜の花のほろ苦さとエビの香りがよく合う菜の花と干しエビの焼き浸し(単品・450円)。左奥の牛肉とコンニャクのきんぴら(単品・450円)はしっかりとピリ辛で、お酒がすすむ味。
ふーちゃんぷるーは野菜たっぷり。ハーフサイズ(500円)でオーダーできるのが嬉しい。
半熟卵のアチャール400円も人気メニュー。アチャールとはインドの漬物のことで、スパイスにしっかり漬け込んだ卵の中から黄身がトロ〜リ。スパイシーなレモネードウィスキーとの相性も抜群だ。
2020年に開催されたイベント「+ Curry高円寺」では、このアチャールにのりや香菜をトッピングしてご飯にのせた「半熟卵のアチャールTKG」がグランプリに輝いた。
2020年に開催されたイベント「+ Curry高円寺」では、このアチャールにのりや香菜をトッピングしてご飯にのせた「半熟卵のアチャールTKG」がグランプリに輝いた。
〆には青唐おかかおむすび2個400円とあおさ海苔のちび味噌汁300円。青唐辛子のピリッとした辛さがクセになる。磯の香り豊かな味噌汁と一緒に味わえば、お腹も心も満たされていく。
気付けば店内は満席。見知らぬ者同士の会話が盛り上がる
いつの間にか店は満席。多くが女性一人客だった。晩ご飯を食べに来た人、アテを少しずつつまみながらお酒を飲む人。それぞれ自由に楽しんでいる。
店には毎日のように訪れる常連さんも少なくないという。常連が多いと聞くと、内輪話ばかりで一見の客はちょっと会話に入りにくそう、そんなイメージを持つかもしれない。でも、この日は音楽やテレビの話から、魚の顔の話、防災の話……。常連だけでなく、みんなが自然に会話に加われる話題ばかり。野口さんや常連さん達がつくるオープンなムードが心地よく、楽しい夜だった。
店には毎日のように訪れる常連さんも少なくないという。常連が多いと聞くと、内輪話ばかりで一見の客はちょっと会話に入りにくそう、そんなイメージを持つかもしれない。でも、この日は音楽やテレビの話から、魚の顔の話、防災の話……。常連だけでなく、みんなが自然に会話に加われる話題ばかり。野口さんや常連さん達がつくるオープンなムードが心地よく、楽しい夜だった。
来るたびに味が深まる果実酒
瓶ごとに飲み切りの自家製果実酒。飲み始めの頃はさっぱりとした味わいだったお酒が、日にちが経つにつれて果実がよく漬かり、味わいも深くなっていく。そんな味の変化を楽しみにしている常連客も多いそう。アールグレイをベースにした「夜の紅茶」、夏に登場するテキーラベースのトマトのお酒「テキトマ」など、個性的なメニューも人気が高い。
DATA
取材・文・撮影=篠原美帆
上記の情報は2024年1月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。
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