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- 下駄絵馬も人気。国内唯一の気象神社を末社に持つ高円寺氷川神社
御朱印やかわいらしいお守りが目当ての神社巡りが趣味という人が増加中。神社はそれぞれに伝わる由来があり、街の歴史との関係も深い場所だ。神社からお散歩をスタートすると、何度も訪れている駅も、初めて降りる駅も、これまでとは違う景色が見えてきそう。
気分も晴れ晴れ、中央線から神社さんぽに出かけよう!
高円寺駅
下駄絵馬も人気。国内唯一の気象神社を末社に持つ高円寺氷川神社
JR高円寺駅から徒歩約2分の場所にある氷川神社は、鎌倉時代から1000年ほどの歴史があるとも伝わる。敷地内には氷川神社の本殿拝殿のほか末社と呼ばれる小さな社が4つあるが、そのうち1つが気象神社だ。日本で唯一、天気にまつわる神様が祭られていて、絵馬やおみくじ、お守りまでかわいいとたくさんの人が参拝に訪れている。
五穀豊穣を願って建てられた高円寺氷川神社
氷川神社という名称の神社は、関東に300社近くあり、総本社は埼玉県の大宮にある。素戔嗚尊(スサノオノミコト、須佐之男命と書く場合も)が祭られていて、氷川という名前の由来も、素戔嗚尊がヤマタノオロチを退治した、現在の島根県斐伊川(ひいかわ)が変化したのではないかという説が有力だ。
高円寺氷川神社が創建された時期ははっきりしない。戦国時代の1500年代半ばという説と、さらに300年ほど古い鎌倉時代という説もある。農村だったこの地の見晴らしのいい場所に五穀豊穣の神として素戔嗚尊を祭ったとされている。
記録があるのは、明治以降のこと。国鉄東中野駅の駅長だった人物が、地元の人たちに請われて宮司となり、現在神社がある敷地に私財で社を建てた。木造だったその社は1945(昭和20)年5月の東京大空襲で焼失。さまざまな記録も一緒に失われてしまった。現在の社殿が建設されたのは、1971(昭和46)年。総鋼鉄製という珍しい拝殿と本殿は、築50年以上とは思えないほど、重厚でモダンな印象だ。
記録があるのは、明治以降のこと。国鉄東中野駅の駅長だった人物が、地元の人たちに請われて宮司となり、現在神社がある敷地に私財で社を建てた。木造だったその社は1945(昭和20)年5月の東京大空襲で焼失。さまざまな記録も一緒に失われてしまった。現在の社殿が建設されたのは、1971(昭和46)年。総鋼鉄製という珍しい拝殿と本殿は、築50年以上とは思えないほど、重厚でモダンな印象だ。
氷川神社の境内を見渡すと神輿がいくつも格納されていることに気付く。8月の最終土曜日と日曜日に行われる例大祭で、10ある氏子地域が担ぐ神輿だ。高円寺でお祭りといえば、東京高円寺阿波おどりを思い浮かべる人も多いだろう。現在では100万人近くの観客が訪れる大きなお祭りだが、東京高円寺阿波おどりは高円寺氷川神社への奉納踊りとして始まった。現在も各阿波踊り連は氷川神社境内で奉納踊りをしてから出発する慣わしになっている。
お参りの前に身も心も清らかに。目にも鮮やかな花手水
近ごろ、氷川神社に女性の参拝者が増えている理由のひとつが2022(令和4)年の夏から行われている花手水。水盤いっぱいに花が浮かべられる様子が美しく、季節を感じさせると人気が出ている。熱心に写真を撮ってSNSにポストする人も多く、水盤の花が新しくなるのはいつかという問い合わせまであるそうだ。
そもそも手水は、神社や寺院でお参りする前に手や口を清めることで、心を洗い清めるという意味も持つ。ひしゃくで水盤の水をすくって両手と口を清めるのが一般的だったが、コロナ禍の影響から多くの神社でひしゃくを撤去した。氷川神社もひしゃくを置くのをやめたところ、水盤があまりに殺風景で寂しかったことから花手水がスタートした。近所の生花店『shizuku』が担当していて、概ね月に2回、暑い時期は週に1回、新しい花を浮かべている。
神社を訪れたら鳥居の前で一礼し、手水で自分を清めてから拝殿に向かうのがおすすめ。氷川神社の手水舎も鳥居を潜ってすぐの右手にある。参拝前に水面に浮かぶ花を眺めて心を鎮めて身も清めて拝殿に進もう。
太陽を取り戻した神様が祭られる全国で唯一の気象神社
全国で唯一、天気の神様を祀っている気象神社の社は、氷川神社の左隣にある。気象神社の始まりは1944(昭和19)年と新しい。最初に建てられたのは高円寺北4丁目にあった陸軍気象部の敷地内だ。陸軍は戦略や作戦に必要な要素として天気予報を行っていて、気象を研究する人たちの心の拠り所として作られたそう。戦後は撤去されるはずだったが、なぜか調査から漏れて社が残り、先々代宮司の山本実氏が移転受け入れを決断して高円寺氷川神社の末社となった。現在の社は2003(平成15)年に老朽化によって再建されたものだ。
祭られているのは知恵の神でもある八意思兼命(ヤゴコロオモイカネノミコト)。古事記では有名な天の岩戸のストーリーに登場する。太陽の神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)が洞窟に引き篭もったせいで世の中が暗闇になってしまったとき、おびき出すためのアイデアを出して世界に太陽を取り戻したことから「気象の神様」としても祭られている。気象神社では「気象記念日」である毎年6月1日に気象祭として神事が行われる。テレビで活躍する気象予報士など多くの人が参詣する。
日頃祈願にやってくるのは、天気が商売に関わる人や、気象予報士試験の受験生、大切なイベントを控えた人など。気象神社の絵馬は天気占いをイメージした下駄の形をしていて、2019(令和元)年公開の映画『天気の子』にも登場して大人気。参道に設置された絵馬掛けはいつもびっしりだ。カラフルな照々みくじもかけられていて、参拝そのものを楽しむ人たちの様子が目に浮かぶ。
心晴れやかに過ごすきっかけに
高円寺氷川神社は、お祭りはもちろん、地鎮祭、お宮参りや七五三など、人生の節目となる機会でも頼りにされる高円寺の鎮守様。一方で、お出かけ先として訪れる人からは、珍しさと天気という身近な対象の神様を祀る気象神社が大人気。境内は週末ともなると1日に約1000人もの参拝者が訪れ、時間帯によっては行列ができるほど。天気が気になるイベントを控えるときはもちろん、心を晴れやかにしたいときこそ訪れてみては?
DATA
取材・文・撮影=野崎さおり
上記の情報は2024年6月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。
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