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プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!
甲府駅
日本一の渓谷美を誇る、秋の昇仙峡でパワーチャージ
秩父多摩甲斐国立公園にある国指定の特別名勝「御嶽昇仙峡」は、日本遺産認定の観光スポット。荒々しくも美しい渓谷は、錦色に染まる秋がスペシャルシーズン。くるりとひと回りするだけで、渓谷沿い、空中、山頂と、いろんな表情を見せてくれる。
この記事の目次
目的地までのアクセスと歩き方
特急あずさ利用で、JR中央線新宿駅から約1時間30分、立川駅から約1時間の甲府駅へ。
特急あずさに乗るなら便利でおトクな「在来線チケットレス特急券サービス」がおすすめ! スマートフォンから予約ができ、駅での特急券の受取不要でそのまま乗車することができる。
https://www.eki-net.com/top/ticketless
甲府駅南口から「昇仙峡」行き山梨交通バスに乗り換え、約30分の「昇仙峡口」下車。絶景が始まる「グリーンライン昇仙峡」下車も良い。昇仙峡ロープウェイは定員46名で20分間隔運行のため、混雑時は数本見逃すことを念頭に。山頂さんぽは足場の悪い場所もあるため、滑りにくい靴がベスト。また、天気の急変が起こりやすいので、レインコート持参がおすすめだ。帰路は「昇仙峡滝上」バス停から乗車を。
▼山梨交通バス
https://ykbus.jp/route_bus/route_sp_info/shosenkyo/
▼昇仙峡ロープウェイ
http://www.shousenkyo-r.jp/
▼昇仙峡観光協会
https://www.shosenkyo-kankoukyokai.com/
昇仙峡遊歩道[甲府駅]
渓谷沿いに続く奇岩・巨岩の競演
荒川に沿って延びる約6kmの遊歩道は、日本一とも称される渓谷美を満喫する小径だ。
枝葉が色づくなか、猿岩、トーフ岩、ラクダ石などの巨岩が、青き清流に、屹立(きつりつ)する山肌に散在。昔の人のネーミングに頷いたり、くすりとさせられたり。
途中の「天鼓林(てんこりん)」は、秋こそ立ち寄りたい景勝地だ。
真っ赤に染まるモミジ林が東屋を包み、一幅の絵画のよう。
目の当たりにする岩のでっかいこと。
足元を清流が勢いよく滑りゆき、見上げれば急峻な覚円峰(かくえんぽう)が空に刺さる。なんてすがすがしい場所なんだろう。
ここはかつて山岳修験道の修行場だった地で、平安時代、覚円僧侶が岩峰の上で修行したことが名前の由来と伝わる。
アーチを描く巨岩の先端が少しだけ浮いているのも不思議な光景。改めて自然の造形美に驚かされる。
この道は江戸末期、人馬が通れる道をと、長田円右衛門(おさだえんえもん)が近隣住民と共に10年の歳月をかけて開削した御嶽新道。道が通じたおかげで、昇仙峡が世に知られることになったそうで、頭が下がる思いだ。
花崗岩の岩肌を削りながら、もうもうと水飛沫を上げる様に誰もが立ち尽くす。
滝の風圧に誘われた色とりどりの木の葉がひらひら舞い踊り、幽玄なひとときだ。
その中の1軒に立ち寄ると、昇仙峡の水晶を見せてくれた。
「昇仙峡の岩盤は花崗岩で、ケイ素の結晶がニョキニョキ生えるんです。でも、1mm育つのに、およそ100年かかるんです」という、スタッフの言葉に目が丸くなる。
黒水晶と珍重された、希少な山梨産黒平(くろべら)水晶のブレスレットなどもあるが、「新たに産出できないので、出回っているものしかありません。石もまた、一期一会の出会いものです」。
各貴石店では、パワーストーンのアクセサリーあり、詰め放題サービスあり、山梨伝統技の手作業によるかっこみ水晶が見られたり。ストーン好きが好みを探し歩く聖地の一面も見せている。
昇仙峡 甲州郷土料理 わらじ[甲府駅/甲州料理]
ほうとうだけじゃない! 甲州のソウルフード
約150年前の江戸末期築の古民家を移築した店に入ると、見事な梁、柱に目が和む。
2020年に創業した店を仕切る依田亜希仁(よだあきひと)さんは「山梨には、ほうとう以外にもいろいろな郷土料理があるんですよ」と話す。
江戸時代には、うなぎが昇仙峡の荒川で獲れ、末期には静岡から中道往還を通って運ばれ、養殖も盛んだったという。
静岡を中心に仕入れた活うなぎを店で捌き、蒸し、ていねいに焼き上げるのは、この道一筋の職人さんだ。うな重4400円(肝吸い、刺身こんにゃく、酢味噌、小鉢、きゃらぶき、漬物付き)を頬張れば、ふわっとろっ。40年間継ぎ足し続ける、甘さ控えめのあっさりしたタレが、うなぎの芳香を際立たせている。
サービスのうなぎの骨もまた心憎い。ポリポリサクサク、噛むほどに旨味が立ち上る。
昇仙峡ロープウェイ山頂[甲府駅]
勇気を出して登れば、待ち受けるのはパノラマの絶景
昇仙峡ロープウェイに乗れば、眼下に荒川ダム、遠くに金峰山が拝める約5分の空中さんぽが楽しめる。
富士山遥拝所あり、樹齢350年の御神木を祭る神社あり。
ひと息ついたら、弥三郎岳方面を目指そう。
天空の白浜かと見紛う展望台に立てば、甲府の街並みが一望できる。
山道を抜け、急坂や階段を上ると、山頂駅から約20分で丸く大きな巨岩が目の前に立ちはだかった。
立って下を覗き込んだり、強い風が吹こうものなら、足は一気にガクブル。
でも、富士山・甲府盆地・白砂山・南アルプス・金峰山・荒川ダムと、360度の大パノラマは胸をすく爽快感で、山頂最大のパワースポットと呼ばれるのも納得だ。
実はこの奥の、もう一つの巨岩こそが弥三郎岳の山頂。そちらと合わせて、ぜひ踏破を。
思いのほか、バラエティに富んだ景色を堪能
渓谷美、貴石選びが楽しい遊歩道はもちろん、山頂の弥三郎岳は季節を変えて足を延ばしたい。気軽に行けるけれど、かなりスリリング。その代わり、トンボの大群が眼下を泳ぎ回る雲上から、甲府盆地を臨む気分はこの上なし。昇仙峡を下から、上から眺めよう。
取材・文=林 さゆり 撮影=オカダタカオ
上記の情報は2024年9月現在のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
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