プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!
山歩きの拠点・御嶽駅だが、駅のすぐ目の前には多摩川が流れ、釣りや、ウォーターアクティビティも盛んだ。そこで今回は、釣りに注目。朝から出かけて、釣った魚を焼いてランチしようという計画だ。果たして、初心者でも魚を釣り上げられるのか。そして水辺では、ほかにも多彩なお楽しみが待っていた!
目的地までのアクセスと歩き方
JR中央線新宿駅から約1時間30分、または立川駅から約50分で、JR青梅線御嶽駅に到着。御岳渓谷遊歩道は、上流を背に「右岸」「左岸」と呼ばれ、舗装された左岸に対し、右岸は山道風情でアップダウンあり。石清水が流れる場所もあるので、滑りにくい履き慣れた靴で。周辺にコンビニはないので、奥多摩フィッシングセンターに出かける際は、おにぎりなどを持参するのも手だ。夏季は日除け、虫除けも忘れずに。
1.
御岳渓谷遊歩道(左岸)[御嶽駅]
歩きやすい川べりの小径で、一路釣り場へ
御嶽駅を出たら、多摩川のほとりへ。両岸に遊歩道が延びて、散策にうってつけだ。
「奥多摩フィッシングセンター」に向かうなら、駅前の道標に従って河原に下り、そのまま左岸で上流を目指すべし。舗装された小径は平坦で歩きやすく、水のほとりに出られる場所も点在。川の音、鳥の歌声が耳に心地よく、土手に咲く野花、新緑を眺めゆけば、吊り橋「杣(そま)の小橋」が山川の情景にアクセントを添える。
2.
奥多摩フィッシングセンター[御嶽駅/ます釣り場]
炭火焼きニジマスを求めて、いざフィッシング!
御岳山へ誘う神路橋を過ぎると、河原が続き、糸を投げ入れる釣り師が増える。奥多摩漁業協同組合が管理するます釣り場だ。多摩川本流ではルアー・フライ釣り3700円(女性・高校生以下3150円)、中・上級者の一般エサ釣り3300円(10匹制限)が、川の水を引き込んだ堀では初級者向けエサ釣り3600円(貸し竿付き・10匹制限)などが楽しめ、「カップルはもちろん、女性同士で楽しむ方も増えてますよ」と、スタッフの方。
右から竹竿、エサのブドウ虫600円とイクラ500円、針はずし、ビク網。
初心者には、長さ約3mの竹製貸し竿の扱い方、エサや網の使い方を教えてくれるので安心だ。エサは2種あり、イクラ500円はニジマスを引き寄せやすいが、有効なのは短い時間。ブドウ虫600円は水の中で長持ちするので、子ども向けだ。「ニジマスはその日の気分で食いつきますから、両方あると釣れる確率が上がります」。毎朝9時すぎに放流されるため、釣りは午前が断然、狙い時だ。
竹竿の根元を持ち、竿先を天からすっと前に差し出して、ニジマスの口元にエサが落ちるよう、群れの真ん中へ、静かに投げ入れる。
「はい、上げて!」
と、スタッフの声が飛んできて、すかさず竿を上げたものの、時すでに遅し。魚はおろか、針にエサの姿がない。やられた……。
川釣りはエサに食いつく時の手応えが薄く、浮きのわずかな動きだけが頼り。見落とさぬよう、見つめることが大事だ。
「食べてる!」と、居合わせた小学生に教えられ、竿を引き上げると、ニジマスがかかっていた。釣ること約1時間。一人5匹を釣り上げ、これでお昼ご飯は安泰だ。
次なるお楽しみは、河原でのバーベキューだ。さばき場に向かえば、スタッフがバーベキュー用に竹串(1本30円)を刺して塩を付け、持ち帰り分も捌いてくれる。バーベキューコンロ小1000円を手に河原の好きな場所に置いたら、着火剤に火をつけ、炭火をおこし、焼き網をセット。片面約20分、ひっくり返して約10分。すると、皮も小骨もパリパリで、身はふっくらしっとり。ほどよい塩気と香ばしさで、気づけば誰もが2〜3尾をペロリ。
川には手作りの丸太橋も架かる。食後は対岸へ渡るなど、河原散策も楽しみだ。
3.
御岳渓谷遊歩道(右岸)[御嶽駅]
巨石、杉林、石段など、変幻する小径を探検
ボルダラーが「デッドエンド」と呼ぶ巨石。
河原から石段を上がると、右岸の遊歩道へ。左岸とは打って変わり、アップダウンのある小径だ。巨石群が点在する河原は野趣に富んだ景色で、御岳ボルダーと呼ばれる関東で人気のボルダリングスポットでもある。
杉林の小径、岩を削り出した石段、木橋、清水が染み出す場所など、まるで山歩きに来たような奥深い情景の数々。花木が美しい御岳苑地が山肌に広がり、渓谷の表情は歩くほどにくるくると変わる。
4.
旅館建物室礼(しつらい)美術館 河鹿園(かじかえん)[御嶽駅/美術館・喫茶]
渓谷を望む元料理旅館で季節を愛で、ほっこり憩う
御嶽駅のすぐ近くに2017年に誕生したのは、老舗料理旅館をそのまま生かした美術館だ。渓谷に張り付くように並び立つ5棟は大正・昭和初期築で、国登録有形文化財。渡り廊下で結ばれた全18室すべてを見て回ることができる。
各部屋の室礼は必見。季節に応じた掛け軸、活け花、調度品などで室内を飾り、客人を出迎える。また、庭木や景観をのんびり眺められるよう、椅子や座布団が置かれているのもありがたい。器を広げた間、ぼんぼりを灯す間など、部屋ごとにガラリと変わる趣向にも心が躍る。
そしてどの部屋でも、床の間の景色に目が釘付けになる。
伊藤若冲、与謝蕪村、円山応挙など、収集する書画の中から、部屋と季節を鑑みて掛け軸を選び、草花がまるで野にあるように花器に活けてあるのだ。
「花は庭木や庭で自然に育ったものなんですよ」と、3代目の宇佐美昭さん。毎朝、花を活け、千利休より続く茶の精神を今に伝えている。
「好きなだけ、ご覧ください」と、卓に並ぶのは、手書きの説明や関連画集。
ほかにも、昭和初期のモダンな円形風呂や、逗留した文人墨客の直筆書画、我楽多市もあり、見どころ満載。年に5回、室礼を変えるので、折々に訪れたい。
さらには、喫茶室も併設。青梅特産にんじんジュース600円(写真はドリンク付き入館券の場合の小サイズ)は、甘みの強いオレンジ色ニンジンの「お日様」もあるが、黄色ニンジンの「お月様」は甘み控えめでみずみずしい香り。表千家流で点てたさわやかな苦味の抹茶とお干菓子500円もいい。木枠の窓の外は緑に包まれた渓谷美。一服しながら見惚れたい。
動と静、対極の渓谷探訪を一度に味わう
駅から徒歩約20分の圏内に、ニジマス釣り、釣った魚での炭火焼き、河辺散策など、気軽にできるアクティビティが目白押し。そして午後は一転し、古の文人たちが愛した風雅をしっとりのんびり満喫。深淵なる御岳渓谷の奥深さを知る1日になる。
また、青梅線・五日市線沿線の情報を発信する「青梅線・五日市線の旅」WEBサイトでは、新緑がきれいな沿線の魅力を発信中。
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取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=加藤熊三
上記の情報は2022年4月現在のものです。
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