プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!

白丸駅

白丸駅から初冬の海沢へ。森と清冽な滝、山間の集落に癒やされる

紅葉もいよいよ終盤。冬支度に入るこの季節、静けさを取り戻す海沢(うなざわ)の森と山里探索とまいろう。滝が次々と現れる海沢渓谷を巡ったら、山間の集落でほっこりのんびり。山里のひとときを満喫したい。

この記事の目次

目的地までのアクセスと歩き方

JR青梅線白丸駅発着、約17kmのトレッキングコース。白丸駅から多摩川を渡り、数馬峡遊歩道へ。アメリカキャンプ村の案内板に沿って海沢林道を約4km進めば海沢園地だ。東屋から案内板に従って海沢二滝を目指す。二滝周遊は約45分。帰路は海沢林道を引き返し、2棟のコテージが目印の駐車場から高台へ誘う小道を行き海沢集落へ。
雨天は滑りやすく、雨天後の林道は凍結の恐れあり。海沢二滝は足場が悪い山道なので、トレッキングシューズは必須だ。


1.

数馬峡(かずまきょう)遊歩道[白丸駅]

多摩川沿いの小径で、野性的な山肌を縫う

白丸駅から青梅街道に下り、奥多摩駅方面へ少し歩くと数馬峡橋が現れる。橋上から見渡せば、とうとうと流れる青き多摩川と錦繍(きんしゅう)に染まる渓谷のコントラストが美しい。
橋を渡って右に折れ、石を積み上げた塀が続く小径を進めば、アップダウンもある山裾の遊歩道だ。網をかけたような枝木の向こうでは清々しい多摩川がずっと見え隠れ。
代わる代わる心を和ませてくれるのは、巨木、ゴツゴツの岩盤を覆う苔、季節の可憐な草花たち。トンネルの先、集落が現れたら小さな冒険も終わりのサインだ。

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2.

海沢林道[白丸駅]

せせらぎ、渓谷美をたどって、深淵なる奥多摩の奥地へ

杉林の林道に始まる一本道で常に耳に届くのは、せせらぎの音。民家が散在する前半の道のりは、小橋から堰を眺めたり、花木に癒やされたり。さらに奥へと歩を進めると、野趣が徐々に溢れ出し、切り立つ崖や巨岩の隙間を、飛沫を上げながら沢の水が流れていく。季節の色に染まる山の、儚げな美しさとの対比にも心奪われる。
途中で目を引くのは、風格漂う海沢隧道(ずいどう)だ。半ばまで来ると真っ暗だが、内部の壁をよく見ると、掘り跡がゴツゴツで、異世界感が半端ない。
トンネルを抜けた後は、手が届きそうな山肌に、沢向こうの渓谷に、滝が次々と現れる。春から秋にかけてはクマも出没する地。冬は静けさの中、ひょっこりニホンカモシカが姿を見せてくれるかも。

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3.

海沢二滝[白丸駅/景勝地]

野趣に富んだ山道の先で、表情が異なる2つの滝に出合う

急カーブする林道の先に東屋が見えたら、海沢園地。ひと息入れたら、東屋の裏側から木橋を渡って滝巡りへ、いざ行かん。
林道とは打って変わって、石がゴロゴロの森の中。細い沢を飛び越えて、洞(ほら)のような巨岩から森を眺めるのも楽しい。静寂に身を委ねれば、沢の音、葉擦れの音、鳥の声が冴え冴えと森の中に響き渡る。
ほどなくして轟音が耳に届くと、勇壮な姿に目が釘付けになる。3段に落ちる三ツ釜ノ滝だ。脇の鉄製の階段を上ると、名前の由来がよくわかる。1段ごとに滝壺が釜のような形になっていて、青い水が溢れ出しているのだ。
ふと足元を見やれば、木の根が這い回る小径に変貌。地中に潜ることなく、階段状に張り巡らされていて、力強い生命力に驚くばかり。
木の幹に巻かれた目印のピンクリボンをたどり、枝木を掴んで山肌を進めば、ネジレノ滝に到着だ。
滝壺のほとりに立つと、荒々しく急峻な崖の間を滝がねじれ落ちてくる。自然が作り出した美しき景観を前に、口を開けてただただ見惚れるばかりだ。

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4.

よってげよ〜 二幸屋[白丸駅/喫茶]

メニューは気まま。親戚の家を訪ねた気になる、ほのぼの空間

林道から駐車場奥の小道を上り、高台にある海沢集落へ。里の風景を眺めながら歩けば、商い中の看板が。テレビドラマ『駐在刑事』のロケ地ともなった喫茶店だ。
薪ストーブの暖かさにほっ。次に、壁一面に飾られた海沢の滝、里の風景を描いた油絵が目に飛び込んでくる。「私が描いたのよ」と、笑顔で出迎えてくれるのは、2代目店主の柏木昭子さんだ。故・母が「地域の人たちのお茶飲み場に」と約40年前に始めた喫茶店を継いで15年。提供する料理やお菓子は「奥多摩の味を楽しんでほしくて、その時の気分で作るの」と、柿など庭になる果実、無農薬の自家栽培野菜などをふんだんに用いている。
コーヒーセット500円のおやつは、シフォンケーキだったり、まんじゅうだったり。弟が栽培するワサビのすりおろしと刻みを入れたオリジナル和菓子のワサビ羊羹は、ほっくり甘い粒あんから爽やかな辛味がふわりと立ち上る。
また、3〜4日前に予約すればランチ2500円(コーヒーとおやつ付き)にもありつけ、山帰りにはありがたし。芋作りから手作りする刺し身こんにゃくが名物で、プルンと滑らかな舌触りには頬が緩む。他にも、落花生や栗のごはん、旬野菜の天ぷらに煮物などなど、民宿の晩ごはんの如きご馳走だ。滋味深い料理やおやつをいただけば、いつしか地元話に花も咲き、朗らかな時間に癒やされる。土曜は自家製パン150円も6〜7種用意している。

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5.

海沢集落[白丸駅/景勝地]

山間にひっそりと息づく、昔ながらの里の情景

腹ごしらえの後は、海沢出身の『よってげよ〜 二幸屋』店主 柏木さんに教えてもらった集落さんぽへ。かつて界隈は大きな池沼で、大蛇が棲んだという伝説が伝わる地。ある時雷が落ち、堰き止めていた山が崩れ、水が流れ出たという。
創建の時期は不明ながら、明治時代に山祇(やまつみ)神社と合祀した海沢神社は、伝説を裏付けるように、古くから加茂別雷神(かものわけいかづちのかみ)をお祀りしている。

樹木に包まれた石段の先、本殿前でキュートな狛犬がお守りしている。
次に、8月第1日曜の祭礼で、獅子舞と祭囃子がともに上るという神路山(かみじやま)へ。頂には大神宮が立つ。柏木さんの「気持ちいいわよ」との声に背中を押され、向雲寺の観音様から墓地の端に沿って気軽に上ると、意外な急斜面に一瞬、たじろぐ。けれど、眼下に海沢の里が広がる特別な場所。山間に点在する家と畑の風情に胸がすくようだ。

厳しくも美しき森の風情と、温かな人里のギャップに心躍る

人里から離れて沢沿いを歩けば、山の神たちが棲む場所。剥き出しの岩盤や苔むす岩肌、草木の合間から、野鳥やニホンカモシカの息吹も感じられる。そんな場所に隣接する集落では、人恋しさに寄り添うような喫茶店が。手作りの奥多摩の味とともに、お腹も心も満たしてくれるのだ。


<番外編>沿線まるごとホテル事業 ~無人駅から始まる~"移動を体験価値化"する新たな旅のカタチ

「小さな風景を感じる、モビリティツーリズム」を期間限定販売中


現在、青梅線沿線を中心に進めている「沿線まるごとホテル事業」。その事業の一貫として、「移動」と「地域資源」を一体的に楽しめる新たな移動型体験と称し、モビリティレンタル事業及びガイドツアーを2022年10月19日(水)~12月11日(日)の期間限定で販売している。
今回の事業では“移動そのもの”が五感で地域を体感できるコンテンツであることを伝えるため、奥多摩の集落を、環境に優しい電車・EVバイク・電動アシスト自転車で巡る“モビリティツーリズム”を造成し、“移動そのもの”に体験価値を付加していくことを目指している。
また、この取組みは、2023年度内に完成予定である古民家ホテルの宿泊者向けに提供する体験サービスとして見据えたうえで実証的に実施している。(※)
ぜひ、沿線の自然やくらしを五感で楽しむ新しい旅を体験してみよう。
 
※本取組みは、東京都の「多摩イノベーションエコシステム促進事業」におけるリーディングプロジェクトに選定されています。
 
■事業詳細・予約・注意事項
下記、沿線まるごとホテル公式サイトから。
(お申込にあたっては、HPにある注意事項等を必ずご覧ください。)
 
■定休日
月曜日・火曜日
(予約が無い日や雨天時等は内容変更または臨時休業する場合があるため、事前に公式サイトをご覧ください。)
 
https://marugotohotel-omeline.com/
 


 

取材・文=佐藤さゆり 撮影=加藤熊三
上記の情報は2022年10月現在のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業休止や営業時間・形態の変更、イベントの延期・中止など、掲載内容と異なる場合があります。
※表記されている料金は税込価格です。

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