プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!

勝沼ぶどう郷駅

山梨ヌーボー解禁! 勝沼を巡る、秋色ほろ酔いワイン旅

「葡萄畑が織りなす風景」として日本遺産に認定された勝沼地区では、ブドウ畑が色づく晩秋ともなると新酒が登場し始める。「山梨ヌーボー」も11月3日に解禁。フレッシュな香りと熟成させたワインを味比べしながら、のんびり巡り歩こう。

この記事の目次

目的地までのアクセスと歩き方

※バスのルートは一例です

特急利用で新宿駅から約1時間30分、八王子駅から約45分で勝沼ぶどう郷駅着。
特急券のご購入はえきねっとチケットレスサービスで。
 
駅を起点にワイナリーエリアまでは約5kmを歩くので履き慣れた靴が必須。また、ワイナリーエリアから駅へは、勝沼地域周遊の甲州市民バス(1乗車300円)などを利用するのもいい。甲州市民バスはぶどうコースとワインコースの2系統があるものの、運行本数は少ないので、駅改札外の時刻表は要チェック。停留所の位置、時刻表、運行経路、走行位置などを、現在地からスマホで調べられる「やまなしバスコンシェルジュ」も便利だ。

やまなしバスコンシェルジュ
https://yamanashi.buskita.com/#/search
甲州市民バス
https://www.city.koshu.yamanashi.jp/docs/2021020300053/


1.

勝沼食堂 Papasolotte(パパソロッテ)[勝沼ぶどう郷駅/イタリア料理]

勝沼産を盛り込んだランチを地元ワインで味わう幸せ

駅に到着したら、まずは腹ごしらえを。坂を少し下ると、小ぢんまりとしたイタリアンが出迎える。2013年の第9回J.S.A.ワインアドバイザー全国選手権大会で優勝し、猿橋でワインショップも営む長谷部賢さんがオーナーだ。
店に入ると、窓越しの景色にため息が漏れた。まるで、眼下に広がるブドウ畑の上に浮かんでいるような心地なのだ。
「ここはもともと民家だったんですよ」と、教えてくれたのはマネージャーの坂口健さんだ。和室と洋室の2間続きの店内には床柱も残り、木造りのほっこり和む風情。白壁に、ワインの作り手や来客たちのメッセージが並び記され、店が親しまれていることをうかがわせている。
ここでは、パスタランチ1980円を。はじめの前菜の盛り合わせから心が躍る。無農薬のモモの摘果をクリームチーズに合わせるなど、地の食材を用いた粋な料理揃いだ。自家製ハムも添えられ、ワインを誘う。坂口さんは料理人兼ソムリエ。甲斐ワイナリー製かざま甲州など、地元ワイナリーはもちろん、山梨県産、海外ワインまで種類豊富だ。本日のグラスワイン650円〜もあり、迷ったら尋ねるのもいい。
パスタにもときめく。香り高い地元産マイタケはエビと合わせてオイルパスタにしたり、クリーム仕立てにしたり。写真のポモドーロは勝沼産トマトのフレッシュな香りが口の中で弾ける。しかも、チーズのミルキーでまろやかなコクがナイスアシスト。ワインをお代わりするか、旬の果実を用いたスイーツに手を伸ばすか、思案のしどころだ。

DATA


2.

祝橋(いわいばし)[勝沼ぶどう郷駅/史跡]

ワイナリーと駅を結んだコンクリート造のアーチ橋

腹ごなしに歩けば、「めがね橋」と地元で親しまれる優美なアーチ橋が現れる。1873年(明治6)架橋だが、1914年(大正3)の架け替えで前年開通の勝沼駅とワイナリーが結ばれ、ブドウやワインを山積みにした荷馬車が往来できるようになった。現在の3代目は1931年(昭和6)開通のコンクリート造。県内で3橋しかない土木遺産、かつ国の登録有形文化財で、今は歩行者専用橋だ。景色を楽しむベンチも用意されている。

ⓒ甲州市

10月下旬頃からは、祝橋と平行して走る新祝橋あたりから眺めるブドウ畑の紅葉が見事。赤ブドウの赤系と、白ブドウの黄系の紅葉パッチワークは甲州特有の秋景色。しばし、見とれたい。

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3.

龍憲(りゅうけん)セラー[勝沼ぶどう郷駅/史跡]

道端に現れる明治期のブドウ酒貯蔵庫

ブドウ畑を縫うように歩けば、道端に不思議な空間が口を開けている。
柵から中を覗けば、ワイン樽がごろり。
ここは、1900年(明治33)頃建造の半地下式ワイン貯蔵庫。日本初の民間ワイン会社『大日本葡萄会社』からフランスに派遣された二人の技術者が、帰国後にアーチ式煉瓦造りのヨーロッパスタイルで造ったという。ワイン関連史跡が街中にあることにも驚かされる。

DATA


4.

ルミエール ワイナリー[勝沼ぶどう郷駅/ワイナリー・ワインショップ]

明治期創業のワイナリーは見学&試飲が楽しみ

洒落た構えのワイナリーがブドウ畑に囲まれて建つ。いよいよ旅の目玉、14時から催される約30分のワイナリー見学(1人500円。前日15時までに2名以上で要予約)へ。
見学はブドウ畑から。1885年(明治18)年設立のワイナリーは、契約農園とは別に、約4haもの自社農園を持つ。
京戸川(きょうどがわ)沿いの緩やかに傾斜する扇状地に、棚や垣根式のブドウ畑が連なり、人工的に耕さず、雑草を生かした不耕起草生栽培の土がふっかふか。「水はけはいいし、寒暖差があるし、光や風もよく入る、ブドウ栽培に適した場所なんですよ」と、広報担当の三枝(さえぐさ)恭子さん。丘の上に立てば、南アルプスを望む爽快な見晴らしにも心奪われる。
醸造棟で仕込み方を学んだら、国の登録有形文化財の石蔵発酵槽へ。中央線のトンネルを掘る際にも出たといわれる花崗岩を積み上げ、1901年(明治34)に造ったものだ。ぶどうの粒を入れ、枝や茎をその上に敷き詰め、スノコを敷き、ゆっくり発酵させる昔ながらの醸造法は今に引き継がれ、石蔵発酵槽内部の石壁を葡萄色(えびいろ)に染め上げている。
他にも、昭和中期に改築された地下セラー(現在は見学中止中)もあり、伝統技法の健在ぶりがうかがえる。
ショップでは、お待ちかねの試飲タイム。約12種が並び、1杯20㎖100円〜400円。見学した石蔵で発酵させた石蔵和飲(いしぐらわいん)をいただけば、骨太で重奏的なふくよかさ。それでいてジューシーでやさしい後味で、うっとりする。
今年収穫された山梨県産「甲州」と「マスカット・ベーリーA」を使って醸造された新酒ワインが、「山梨ヌーボー」だ。新酒は毎年11月3日に解禁。今年収穫&醸したてのフレッシュな香りを満喫したい。各750㎖1760円。
自社農園産ブドウだけで仕込んだ「光」シリーズも見逃せない。約2年、樽熟成させた後、無ろ過で瓶詰めした2016年のカベルネ・ソーヴィニヨン750㎖6600円など、大地の味を凝縮させた芳醇な香りは贈り物にも最適だ。

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晩秋から初冬の勝沼は、そぞろ歩きにうってつけ!

勝沼と言えば、春の花、夏の果実に注目しがちだが、秋の紅葉にも息をのむ。高台から望めば、大地に敷き詰めた絨毯のようで、品種の違いで葉の色付きが変わり、美しき模様を描いている。また、山梨ヌーボーをはじめ、新酒もお目見えする季節で、試飲といえど、つい杯が重なってしまう。酔い覚ましに、天高き秋空の下をのんびりゆったり練り歩こう。

取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=オカダタカオ

上記の情報は2021年10月現在のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業休止や営業時間・形態の変更、イベントの延期・中止など、掲載内容と異なる場合があります。

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