プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!
奥多摩駅からバスに揺られること約1時間。隠れ里のように存在する山梨県丹波山(たばやま)村。関東圏一小さい村(※島しょ部を除く関東圏で最も人口が少ない村)には、自然の立地を生かしたアクティビティが点在し、大人も子供も夏休みにうってつけ! 山里の夏を満喫しよう。
目的地までのアクセスと歩き方
JR中央線新宿駅から約1時間55分・立川駅からは約1時間10分の奥多摩駅で下車。土・日・祝のみ運行する、「ホリデー快速おくたま1号・81号/3号・83号」に乗ると、奥多摩駅でバスの乗り換えにちょうどいい時間に到着する(運行日はJR東日本のホームページなどで確認を)。
「丹波山村役場」行きの西東京バスに乗り換え、約50分の「丹波小学校」バス停で下車。バスは平日3往復、土・日・祝でも6往復と本数が少ないので、事前確認がおすすめ。河原や森の中の遊歩道を歩くので、歩きやすいスニーカーで、タオル類、虫除けを持参し、日焼け対策も万全に。
<西東京バス時刻表>
https://www.nisitokyobus.co.jp/rosen/pocket.html
1.
ローラーすべり台[奥多摩駅/すべり台]
山城から緩急入り混じる約2分半の空中散歩を
雲取山・七ツ石山への登山客が途中で下車すると、バスの車内はのんびりムード。ほどなく丹波山村に着きバスを降りると、山の上にポツンと鎮座する城が見えた。そこを目指してなだらかな坂を登ると、ローラーすべり台の受付に出た。
「あれはね、城風の展望台」と教えてくれたのは、管理人の楳澤(うめざわ)千代男さんだ。城を起点に全長247m、高低差42mのローラーすべり台が伸び、大人客も少なくないという。ものは試し。体育座りの姿勢を保つ、ブレーキを足でかけないなど、注意点を聞いたら、ボードを借り、軍手をはめ、すべり台と並行する階段を喘ぎながら登ってみることに。
頂上に到着すると、2階建ての展望台から里の情景が一望でき、ご褒美のような気分。通り抜ける風も心地よく、汗がすっと引いていく。
さて、いよいよすべり台へ。出だしは思った以上のスピードでヒヤリとするが、トンネルを越え、ループするところでまさかの失速。サイドバーを手繰り寄せるようにして再びスピードに乗れば、後半はあっという間だ。
「長い階段で足に乳酸が溜まりやすいので2回以上滑るといいですよ」。
しかも、1人より2人、2人より3人と、だんごになって滑ることでスピードアップするという。甘い言葉に乗せられ、2度目は居合わせた女性客と3人で滑降すると、1人の時よりスリルが格段に増し、絶叫が谷間にこだました。
2.
村営つり場[奥多摩駅/釣り・おみやげ]
沢の水の冷たさ、ニジマスの素早さに四苦八苦
森の中の遊歩道「グリーンロード」を抜けると丹波川だ。釣りスポットだが、7・8月の夏季限定で、つかみどり体験も楽しめる。
源流の沢に設けられた区画がつかみどりのポイントで、購入したニジマスが放流されたら、いざ挑戦! 子供の遊びと侮ってはならない。ニジマスは近づくとヒョイッと身を翻し、積石の下に隠れたり、つかんでも手からスルリと逃げだしたり。その上、沢の水が刺すような冷たさ。時折河原の石で温まりながら追いかけるべし。
また、炭火焼きも忘れずに。焼き代は1匹100円。50〜60分ほどかけ、背、腹、両面と4面焼きしてくれ、丸かじりする人が続出。管理人の小池文夫さんは「この焼き魚(1匹400円)だけが目当て、という方もいて、到着1時間前に電話注文されますよ。手みやげにも喜ばれています」と、目尻を下げる。
清らかな沢の水で育った養殖の鮎も自慢だ。若鮎すし770円は『道の駅たばやま』で通年販売しているが、夏の間は村営つり場併設の『川の駅やまびこ庵』でも手に入る。さっぱりと酢を利かせた飯と鮎の風味が秀逸で、ニジマスの炭火焼きと一緒に頬張りたい。
3.
雄滝・雌滝(おだき・めだき)[奥多摩駅]
つり場からすぐ辿り着ける、深遠なる渓谷美
養魚池に沢から水を引く水路を辿ると、2段滝が現れる。樹木が天を覆い、空気がひんやり。山深く感じるが、つり場からはものの数分。裸足で岩を伝い歩けば、水飛沫が心地いい。ニジマスを焼いてもらっている間に立ち寄りを。
4.
TABA CAFE[奥多摩駅/カフェ]
山里の風情とともに味わう丹波山ジビエ
つり場から橋を渡り、街道へ出ると、明治期築の古民家カフェが暖簾をはためかせている。柱、梁、建具を生かして改修された店舗は「元校長先生のお宅で、明治期の大火で焼け残った数少ない古民家です」と、シェフの星野允人(よしひと)さん。
ここでは、丹波山のジビエ・鹿肉のラグーに注目したい。都内のイタリアンなどで腕を磨いた星野さんは「ジビエは地域ごとに味や香りが違うんです。丹波山は鹿肉らしい香りをしっかり残しながら、臭みやクセがないのが魅力」と絶賛。粗挽き鹿肉の旨味が濃く、ミートソースがまろやかで、平日はパスタランチ950円(ドリンク付き)、週末はラザニアプレート1600円(スープ、ドリンク付き)で味わえる。村で人気の『きのしたベーカリー』製天然酵母パンとも相性抜群だ。
ランチドリンクには+200円の自家製梅ジュース(単品600円)を。庭でとれた梅で作った甘酸っぱい香りが涼を呼ぶ。追加で注文したヴィーガンケーキ500円(単品600円)と味わいながら窓の外を眺めれば、のどかな山里の風情にもほっこり和む。
また、店内では地元特産品も販売。近所の食堂『オオカミ印商店』製の合わせ味噌760円は麦麹多めの丹波山に伝わる昔ながらの味。乾燥原木舞茸1800円は肉厚。そもそも原木舞茸自体が、村外にあまり出回らない希少なもので、「旬は9月下旬〜10月上旬の2週間だけなんです」。見つけたら、迷わず手に入れるべし。
5.
丹波山温泉 のめこい湯[奥多摩駅/温泉]
温泉の威力を痛感! ハリツヤ戻る美人の湯
丹波山に来たら、温泉は外せない。道の駅たばやまから吊り橋を渡ると、美人の湯と評判の立ち寄り温泉『のめこい湯』が立つ。2つの風呂は日替わりの男女入れ替え制で、洋風のローマ風呂は八角形に広がる木組みが優美。風呂場に入ると、硫黄の香りが鼻をくすぐる。
素朴な山小屋風の和風風呂では、巨石を組んだ露天風呂が豪快。森の緑に目も潤う。のんびり浸かると、湯がとろりと体にまとわりつき、みるみるうちに肌がツルッ、キュッとしてきて、ハリツヤの即効性に驚くばかり。もちろん、湯上がりはしっとりスルスベだ。丹波山村役場の温泉管理担当・中村裕樹さんは「ツルツルな、とか、すべすべなことを、ここでは“のめっこい”と表現します。僕はこののめっこさに惚れて移住しました」と、相好を崩す。納得です。
6.
道の駅たばやま[奥多摩駅/道の駅]
締めは幻のじゃがいもソフトでクールダウン
風呂上がりのクールダウンには、ソフトクリームが鉄板だ。道の駅たばやまの軽食堂『TABAテラス』には、山梨県産のモモ、ブドウのフレーバーもあるが、初夏と11月なら、期間限定の幻の在来種ジャガイモ“つやいも”のソフトクリーム600円がお目見え。地域活性を目指す中央大学の学生が開発したもので、ミルキー&なめらかな口溶けの後、ふわりとジャガイモの風味が広がり、甘みを抑える。締めに最強だ。
コンパクトに巡れて、山と川と里を満喫!
ぐるりと巡るだけで、山の風情も川遊びも堪能でき、贅沢な気分。昨今、郷土の味を提供する飲食店も誕生し、村民ののんびり大らかな人柄に触れながら味わうのも心楽しい。もっとあれこれ発掘したくなる。
取材・文=林さゆり 撮影=逢坂 聡
※上記の情報は2023年7月現在のものです。
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