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- 境内に富士山と河口湖?! 武蔵境の懐深い鎮守様、杵築大社(きづきたいしゃ)
御朱印やかわいらしいお守りが目当ての神社巡りが趣味という人が増加中。神社はそれぞれに伝わる由来があり、街の歴史との関係も深い場所だ。神社からお散歩をスタートすると、何度も訪れている駅も、初めて降りる駅も、これまでとは違う景色が見えてきそう。
気分も晴れ晴れ、中央線から神社さんぽに出かけよう!
武蔵境駅
境内に富士山と河口湖?! 武蔵境の懐深い鎮守様、杵築大社(きづきたいしゃ)
武蔵境駅から徒歩5分ほどの場所にある杵築大社は、境内中央に立つ御神木の千本イチョウをはじめ、緑豊かで、まるで森のような雰囲気さえ漂う。創建された江戸時代から島根・松江にゆかりがあり、五穀豊穣と商売繁盛の神を祭る地元密着の鎮守様だ。実はそのときどきに、地元の人たちのニーズに応えてきた柔軟で懐深い神社でもある。緑に囲まれた境内で心を静めて、いろいろな願いを聞いてもらおう!
葵の紋に大黒様と恵比寿様。懐深い旧境村の鎮守様
杵築大社の歴史は約370年。当時は境村と呼ばれていた武蔵境周辺には、三代将軍・徳川家光の従兄弟で松江藩のお殿様、松平直政が鷹狩りをするために屋敷を置いていた。杵築大社は、その屋敷の屋敷神として慶安年間(1648~1652年)に創建されたと伝わる。神社境内には、鳥居、賽銭箱、提灯などあちこちに葵の紋が隠れているので探してみては?
祭られているのは、出雲大社と同じ大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)。当時杵築大社と呼ばれていた現在の出雲大社から分祠(ぶんし)された。大国主大神は国づくりの神様、また因幡の白兎に適切な治療法を教えた医療の神様、そして大黒様としても知られている。
祭られているのは、出雲大社と同じ大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)。当時杵築大社と呼ばれていた現在の出雲大社から分祠(ぶんし)された。大国主大神は国づくりの神様、また因幡の白兎に適切な治療法を教えた医療の神様、そして大黒様としても知られている。
実は杵築大社の本殿には大国主大神とは別の神様も祭られている。その神とは、事代主大神(コトシロヌシノオオカミ)でやはり出雲にある美保神社が総本宮だ。事代主大神は大国主大神の息子。商業の神で、こちらは恵比寿様としても親しまれている。事代主大神が祭られるようになったのは終戦の翌年である昭和21(1946)年。地元の商店街発展を目的に迎えられた。つまり杵築大社は、縁結び、五穀豊穣、医療、商売繁盛と色々な願いを聞いてもらえる懐深い神社なのだ。また境内には八坂神社、金刀比羅宮、稲荷神社、道を挟んだ反対側に弁天宮もあるので、願い事に応じて末社もお参りしたい。
杵築大社は20年ほど前から武蔵野吉祥七福神めぐりのコースにもなっていて、境内の神輿殿には大国様と恵比寿様がやはり並んで祭られている。七福神めぐりがイベントとして行われる年始に限らず、神輿殿の大国様と恵比寿様は人気。訪れたら忘れずにお参りしたい。
33回登ってご利益を。富士山信仰の人たちが作った小さな富士山
杵築大社の境内には、「杵築大社の富士山」と呼ばれる小山(富士塚)がある。この杵築大社の富士山は明治14(1881)年5月に作られたもの。富士山そのものを御神体とする山岳信仰、富士講の信者が近隣に多く住んでいたことから作られたと言われている。実際に富士登山をした当時の人たちが、溶岩石を持ち帰って積み上げたのだとか。
杵築大社の富士山は、高さ約10メートル。頂上には富士浅間神社のお社がある。祭られているのは木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)で、安産、産業などの神様だ。
杵築大社の富士山は、高さ約10メートル。頂上には富士浅間神社のお社がある。祭られているのは木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)で、安産、産業などの神様だ。
登山道には1合目、3合目などの印があり、一部には手すりも設けられている。途中には「登山三拾三度」と彫られた石碑もある。「33回登ると御利益がある」という意味だ。
ふもとには錦鯉が悠々と泳ぐ池がある。実はこの池は、富士五湖を模したものと言われていて、かつては池が複数あったそうだ。現在残っている池のモデルは河口湖だと言われる。
ふもとには錦鯉が悠々と泳ぐ池がある。実はこの池は、富士五湖を模したものと言われていて、かつては池が複数あったそうだ。現在残っている池のモデルは河口湖だと言われる。
富士講は江戸を中心に江戸時代から昭和初期まで続いていた庶民の信仰。経済的にも体力的にも誰もができることではない富士登山は、信仰する人にとってはあこがれだった。そのことから小さな富士山を作って代わりに登ったのだ。このような小さな富士山(富士塚)は都内に約60以上あると言われている。杵築大社の富士塚は三多摩地域では清瀬市にあるものに次いで2番目に大きい。
地元の神社にある小さな富士山は、当時の人たちにとっては、ありがたい場所であると同時に、テーマパークのような楽しいお出かけ先だったのだろう。ぜひ33回登ってみたいが、まずは1回目からチャレンジしよう!
地元の神社にある小さな富士山は、当時の人たちにとっては、ありがたい場所であると同時に、テーマパークのような楽しいお出かけ先だったのだろう。ぜひ33回登ってみたいが、まずは1回目からチャレンジしよう!
【立ち寄りスポット】シンプルな味わいが魅力のジェラート
杵築大社の富士山に登ってお参りしたら、もう少し歩いて冷たいジェラートを食べるのはいかが? 『Gelateria Figurati Tokyo(ジェラテリア フィグーラティ東京)』があるのは、JR武蔵境駅から徒歩18分ほどのところ。おいしいジェラートが手頃な価格で味わえると遠方からも訪れる人が絶えないお店だ。
ショーケースにはジェラートが9種類ほど並ぶ。定番のクラシックミルクは北海道産の牛乳と生クリームを使っていてコクがあってクリーミー。そのほか、季節を問わず用意されているのはプレミアムピスタチオ、宇治抹茶。そしてチョコレートのジェラートは実は複数あって、日によって種類が異なる。
季節の作物を使ったジェラートもあり、夏は白桃、とうもろこし、チェリーなど。秋になると山梨のシャインマスカット、冬は地元三鷹産キウイもラインナップに加わる。ヨーグルトやチーズをベースにフルーツを加えたジェラートも人気だ。どれを選ぶか迷ってしまうなら、カップ入りのテイクアウトも検討したい。1種類ずつ入ったジェラートが常時25~30種類近く用意されていて、発送も可能だ。
季節の作物を使ったジェラートもあり、夏は白桃、とうもろこし、チェリーなど。秋になると山梨のシャインマスカット、冬は地元三鷹産キウイもラインナップに加わる。ヨーグルトやチーズをベースにフルーツを加えたジェラートも人気だ。どれを選ぶか迷ってしまうなら、カップ入りのテイクアウトも検討したい。1種類ずつ入ったジェラートが常時25~30種類近く用意されていて、発送も可能だ。
どのジェラートもシンプルなおいしさを心がけていると話す店主の土田剛さん。イタリアンの料理人として経験を積んだあと、一時は厨房の仕事を離れていたが、長女がアイスを嬉しそうに食べる表情を見てジェラート作りを独学で研究。かつてイタリアで訪れたような、近隣の人に愛される住宅街のジェラテリアを現在の場所に開いた。
とろりとした食感も魅力のジェラートは、店頭に置かれたベンチに座って味わう人が多い。ゆっくり味わいたいからまだ溶けないで!と願いたくなる味だ。
とろりとした食感も魅力のジェラートは、店頭に置かれたベンチに座って味わう人が多い。ゆっくり味わいたいからまだ溶けないで!と願いたくなる味だ。
緑豊かな境内で深呼吸を
杵築大社は、どこか懐かしい雰囲気。10月第1土・日に開かれる例大祭がいちばん大きなお祭りで、神楽殿で開かれるカラオケ大会は地域の参加者で盛り上がるのだとか。境内は背の高い木もたくさん植えられている。御神木の千本イチョウをはじめとして、サクラや榊(さかき)、ザクロなど多くの植物が見られ、鬱蒼とした雰囲気さえある。神社から少し歩くと、今も農園で果物が栽培されている一画もある武蔵境。ゆっくり巡り歩いて、束の間の森林浴をしてみては?
DATA
取材・文・撮影=野崎さおり
上記の情報は2024年7月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです
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