水道橋駅新宿駅
老舗から始まる中央線カレーレイルウェイ
中央線沿いにはバラエティに富んだカレー店が集まっている中、老舗店も多く存在している。
数ある中から今回は、本格インド式カリーを日本で初めて提供した『新宿中村屋』と、欧風カレーという言葉を初めて使った『欧風カレー ボンディ』の日本初の2軒にクローズアップ。店名は知っていても実は食べたことがないという人もいるのでは?
それぞれの歴史や味のこだわりにググっと迫って、長年愛されている理由を探ってみた。中央線のカレー好きならぜひ一度行ってみて!
この記事の目次
スパイスの個性を生かした日本初の本格インドカリー
レストラン&カフェ Manna/マンナ 新宿中村屋[新宿駅]
誕生から100年近く経った現在も、多くの人に愛されている「中村屋純印度式カリー」2090円。ひと口食べると、深いうま味とともにふわっと立ち上がるスパイスの香りに満たされる。程よい辛さでまろやかさもあるけれど、キリッとしたスパイスのメリハリもあり、そのバランスがすばらしい。
ゴロッと入った骨付きの鶏肉は、味わいを深めるためのこだわりの一つ。食べにくいかと思いきや、ほろっと崩れるやわらかさに感動! 発売当時は満足できる鶏肉がなかったため自ら養鶏場を立ち上げ、バターや牛乳のために自社牧場まで経営していたというから驚く。今でも一般のヨーグルトだと酸味が足りないため、お店の厨房でカリーに適したヨーグルトを作っているという。
ゴロッと入った骨付きの鶏肉は、味わいを深めるためのこだわりの一つ。食べにくいかと思いきや、ほろっと崩れるやわらかさに感動! 発売当時は満足できる鶏肉がなかったため自ら養鶏場を立ち上げ、バターや牛乳のために自社牧場まで経営していたというから驚く。今でも一般のヨーグルトだと酸味が足りないため、お店の厨房でカリーに適したヨーグルトを作っているという。
もともとは、1901(明治34)年に、創業者の相馬愛蔵氏が当時人気の高まっていたパンに目を付け、本郷にあったパン屋『中村屋』の居ぬきで創業したのがはじまり。人気店だったため、店名をそのまま引き継いだというのがおもしろい。1909(明治42)年に現在の地に移転したのも、東京市電の終点だった新宿は発展するに違いないと考えたからだとか。
純印度式カリーが誕生したのは、インド人のラス・ビハリ・ボース氏との出会い。インドの独立運動でイギリス政府から追われ、日本に亡命したボース氏をかくまうなかで、相馬氏の娘・俊子さんと恋に落ちて結婚することに。ゆえに「新宿中村屋」のカリーは、“恋と革命の味”なのだ。
1927(昭和2)年に喫茶部(レストラン)を立ち上げることになり、そのメニューのひとつとして純印度式カリーが発売された。母国インドのような本格カリーを提供したいというボース氏が、毎朝お店で味のチェックをしていたという。
1927(昭和2)年に喫茶部(レストラン)を立ち上げることになり、そのメニューのひとつとして純印度式カリーが発売された。母国インドのような本格カリーを提供したいというボース氏が、毎朝お店で味のチェックをしていたという。
本場のインドカリーを目指すためにボース氏がこだわったのは、スパイス使い。20種類以上のスパイスの生かし方を考えながら、3段階に分けて合わせていくのがポイントだ。まず、スタータースパイスとしてバターや玉ねぎと一緒に炒め、次にブレンドしたカリー粉の挽き方を変えた粗めと細かめの2種を追加。最後に炒ったスパイスを煮出して煎じたマサラを合わせる。カリーは時間が経つと風味が飛んでしまうため、お客様の来店状況を予測しながら朝・昼・夜の前に分けて作るという。
歴史の長い店だけに古くから通う方も多いため、スタッフの教育も徹底している。入社し、まず最初に新宿中村屋と中村屋のカリーの歴史を学ぶという。ランチタイムからウェイティングがある忙しない状況のなか、きびきびと動く立ち居振る舞いも見ていて気持ちがいい。
カリーに付いている6種の薬味も丁寧に説明してくれる。左上から、らっきょう、ロシアのキュウリの酢漬けであるアグレッツィ、オニオンチャツネ、マンゴーチャツネ、レモンチャツネ、粉チーズが並び、ちょっとずつ試しながら自分好みのバランスを見つけられるのも楽しい。
ライスも基本はコシヒカリだが、165円追加で発売当時に使われていた「白目米」に変更できる。サラリとしているが噛むともちっとした歯ごたえでにじみ出るような甘みがあり、確かにカリーにぴったり。ぜひ白目米への変更をおすすめする。
ライスも基本はコシヒカリだが、165円追加で発売当時に使われていた「白目米」に変更できる。サラリとしているが噛むともちっとした歯ごたえでにじみ出るような甘みがあり、確かにカリーにぴったり。ぜひ白目米への変更をおすすめする。
純印度式カリーと並んで人気なのが、1959年に登場した「コールマンカリー」2398円。メニュー名のもとにもなっているインドのチキンコルマをイメージ。トマトと自家製ヨーグルトの酸味とうま味が活きたまろやかで上品な辛さだ。この個性的な味に魅了され、コールマンカリーしか食べないという方もいるそう。
どちらか選べないという人は、ハーフ&ハーフセット3245円で好きなカリーを2種選んで食べ比べを楽しんでほしい。
どちらか選べないという人は、ハーフ&ハーフセット3245円で好きなカリーを2種選んで食べ比べを楽しんでほしい。
フランスで出合ったブラウンソースをヒントに考案
欧風カレー ボンディ[水道橋駅]
「欧風カレー」というジャンルは言うまでもなく日本に定着しているが、この言葉を初めてメニューに付けたのが『欧風カレー ボンディ』だ。創業者の村田紘一氏が美術の勉強のため滞在していたフランスで、ブラウンソースをはじめとするソース文化に感銘を受けたのがきっかけだという。
看板メニューの「ビーフカレー」1600円をはじめ、すべてのカレーのベースになっているのがブロック状の牛肉や野菜、スパイスなどを合わせたブイヨンスープ。そこに生クリーム、特注のバターをたっぷり加えてカレーソースを仕上げていくという。口に入れるとややとろみがあり、ゴロゴロ入ったビーフはとろとろ。ほんのり甘みを感じるまろやかな味わいにうっとりしていると、あとからじわじわと辛さが押し寄せてくる。「ブイヨンスープの野菜の甘みのほか、桃とリンゴのピューレも隠し味で入れているんです」と店長の秋田さんが教えてくれた。
看板メニューの「ビーフカレー」1600円をはじめ、すべてのカレーのベースになっているのがブロック状の牛肉や野菜、スパイスなどを合わせたブイヨンスープ。そこに生クリーム、特注のバターをたっぷり加えてカレーソースを仕上げていくという。口に入れるとややとろみがあり、ゴロゴロ入ったビーフはとろとろ。ほんのり甘みを感じるまろやかな味わいにうっとりしていると、あとからじわじわと辛さが押し寄せてくる。「ブイヨンスープの野菜の甘みのほか、桃とリンゴのピューレも隠し味で入れているんです」と店長の秋田さんが教えてくれた。
創業者の村田氏は板橋区高島平にある『インディラ』を営んでいたが、『神田古書センター』のオーナーに誘われ、1978年にこちらの店を新たにオープンした。当時はこの界隈にカレー専門店は少なく、神保町が“カレーの町”となる先駆けといわれている。『神田古書センター』の2階にあり靖国通り沿いの看板に店名が掲げられているが、お店に入るにはぐるっとまわった裏側の南口へ。
テーブルに座って最初に運ばれてくるのが、ふかしたじゃがいも。理由を聞くと、「じゃがいもをカレーソースに入れて煮込んでしまうと溶けて味が変わってしまうのと、お腹いっぱいになってほしいという創業者の思いが込められています」と、秋田さん。創業時から満足感にこだわっていて、ごはんも普通盛りが300gもあるのだ。
じゃがいもは2個付いてくるので、1個はじゃがバターで、もう1個はカレーソースの中に入れたり、カレーソースをかけたりと、好きなように食べられるのがうれしい。
じゃがいもは2個付いてくるので、1個はじゃがバターで、もう1個はカレーソースの中に入れたり、カレーソースをかけたりと、好きなように食べられるのがうれしい。
現在、本店の店長を務める秋田さんはアルバイトから社員になったそうで、ボンディ歴18年! 「何十年ぶりに食べたけど変わらないね、懐かしい、とお客様に喜んでいただけるとうれしいです」。また、創業時と同じレシピで作られているカレーが、「神田カレーグランプリ」の第1回優勝店に選ばれたのも、時代が変わっても愛され続ける味ということを証明している。
常連客からのリクエストでメニュー化されたのが、「チーズカレー」1600円。カレーソースをすくうとチーズは表面だけでなく底のほうまで沈んでいて、チーズを食べていると思うくらいの濃厚さ。まろやかカレーにチーズのコクや塩味、具のマッシュルームの香りが加わってちょっとリッチな味わいに。お客様のなかには、さらにチーズトッピングをしてダブルチーズで楽しむ人もいるとか。
卓上に置かれた薬味は、青しその実、福神漬け、らっきょう、レーズンの4種。なかでも、ポリポリ食感が小気味いい青しその実は、スッキリとした甘酸っぱさで口直しにぴったり。「じゃがいもをつぶして、青しその実を混ぜてポテサラ風にアレンジする人もいるんですよ」と、秋田さんが教えてくれた。長い歴史があると、お客様が独自に生み出す新しい食べ方に驚かされることもあるという。
また、この店でひっそり人気を集めるのがデザートの「なめらかプリン」600円と「焼きリンゴ」700円。プリンはまろやかな舌ざわりで卵の風味が濃厚! 焼きリンゴはシャキシャキ感がほどよく残り、甘さ控えめであと味すっきり。じゃがいもとボリューム満点のライスでお腹いっぱいになる人がほとんどだと思うが、余裕があればぜひこの2品もぜひ!
DATA
文=井島加恵、撮影=加藤熊三
上記の情報は2024年9月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。