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プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!
甲府駅
銭湯、喫茶にモダン建築。甲府駅からレトロ街さんぽへ
甲府は戦国武将の武田信玄公が有名だが、それだけにあらず。鉄道遺産、洋館、蔵などが駅近くに立ち、ノスタルジックな風情が漂う。さらに、文豪・太宰治が昭和初期に通った温泉銭湯も健在だ。そぞろ歩きの締めくくりには、山梨県産ワインを味わいたい。
この記事の目次
- 目的地までのアクセスと歩き方
- 1.かふふ驛煉瓦広場[甲府駅]
明治時代の鉄道遺産で憩う - 2.武田信玄公像[甲府駅]
今年は生誕500年のメモリアルイヤー - 3.六曜館珈琲店 [甲府駅/喫茶店]
戦前建築の意匠と骨董が魅惑的な純喫茶 - 4.喜久乃湯温泉 [甲府駅/銭湯]
文豪も愛した温泉銭湯で生き返る - 5.藤村記念館[甲府駅/資料館]
優美な疑似洋風建築は旧小学校校舎 - 6.甲州夢小路 [甲府駅/複合施設]
甲府城下の小路へタイムスリップ! - 7.カフェ&ワインバー 葡萄酒一番館[甲府駅/ワインバー]
帰路前に、山梨伝統スタイルでワインをいただく - 8.ワインセラー(セレオ甲府) [甲府駅/ワイン販売]
山梨産ワインが約300種揃う!
目的地までのアクセスと歩き方
特急あずさ利用で、JR中央線新宿駅から約1時間30分・立川駅から約1時間で甲府駅着。甲府駅を起点に南北を行く街歩きなので、履き慣れた靴で。銭湯利用の場合はタオル必携。シャンプー・リンス・ボティソープは別途販売あり。
1.
かふふ驛(えき)煉瓦(れんが)ひろば[甲府駅]
明治時代の鉄道遺産で憩う
JR甲府駅(1番線ホーム)に降り立つと、クラシックな風情をまとうモニュメントがホームで客人を出迎える。“かふふ”とは甲府の呼び名。1903年(明治36)の開業時から昭和期にかけて実際に使用された旧煉瓦倉庫、旧こ線橋柱、旧甲府駅の釣鐘を集めて作られた。ベンチでひと息つきたくなる。
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2.
武田信玄公像[甲府駅]
今年は生誕500年のメモリアルイヤー
南口の駅前広場にどっしり構える武将が。彼こそが、戦国時代に名を馳せた甲州の猛者・武田信玄公だ。2021年11月に生誕500年を迎えるお館さまにまずご挨拶して、街歩きへと繰り出したい。
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3.
六曜館珈琲店 [甲府駅/喫茶店]
戦前建築の意匠と骨董が魅惑的な純喫茶
木造りでアーティスティックな純喫茶があると聞き、大通りから1本入る。
すると、森のようにこんもり緑が茂る一角に目が留まった。戦後間もない頃、戦前建築を移築した旅館『萬集閣(まんしゅうかく)』だ。1972年(昭和47)、旅館の応接室にカウンターと棚を設け、勝手口を玄関にした喫茶が開業。緑の正体はアイビーで「喫茶の開業時に頂いた時は2株の鉢だったのに、冬でも枯れないの」と、ママは朗らかに笑う。
入り口そばには色とりどりのマッチが展示され、中へ入ると10個のランプがシャンデリアのごとく吊り下がり、ステンドグラスが艶やか。戦前の甲府の古写真、文明開化を伝える版画の赤絵などが壁を彩り、まるでプチ資料館だ。
信玄公パフェにも惹かれるが、平日11時〜14時30分なら、ネルドリップで淹れるコーヒー付きの日替わりランチ1000円を。「私の好きな味に仕上げてます」とママが作る金曜のランチはカレーで、まろやかながら後からスパイスがふんわり。夜限定メニューの名物・餃子をビールやワインと楽しむのもいい。耳に響くのはクラシック音楽と古時計が時を刻む音。ドリンクを手に、まどろみへと誘われる。
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4.
喜久乃湯温泉 [甲府駅/銭湯]
文豪も愛した温泉銭湯で生き返る
さて、眠気冷ましに線路を越えて北口エリアへ。のどかな住宅街は1939年(昭和14)、太宰治が師の井伏鱒二の勧めで結婚し、新婚時代を暮らした地。日々顔を出したのが、1926年(昭和元)から続く温泉銭湯だ。番台に上がる3代目女将の平賀理恵子さんは「新居がすぐ近くなので、雨が降っても傘をささずにやってきたそうです」と教えてくれた。
1966年(昭和41)に建て替えたが、昔懐かしい体重計、木製ロッカー、籐製脱衣かご、手描き看板などが脱衣場を彩り、昭和の趣が濃厚!
タイル張りのレトロな浴室にも心躍る。カランを含め、湯はすべて自家源泉のカルシウム・ナトリウムー硫酸塩泉だ。「車座で話せるように」と、温度の異なるひょうたん型風呂が印象的。43℃の大風呂と42℃の小風呂の奥に、38℃の加温源泉、28℃の源泉、サウナまである。温冷交代浴をすれば、火照った体をとろんとなめらかな源泉がやさしく肌を包むよう。「2時間ほど、ゆっくり入る方が多いですよ」
2階には畳敷きの広々した大広間が。3連コタツ、オットマンチェアに加えて、冷蔵庫やレンジを完備し、持ち込み飲食も可能だ。共に美大卒の平賀夫妻の作品も飾られている。湯上がりに惰眠を貪り、また湯に浸かる。そんなプチ湯治が気軽に満喫できるのも幸せだ。
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5.
藤村(ふじむら)記念館[甲府駅/資料館]
優美な擬洋風建築は旧小学校校舎
甲府駅北口へと戻ると、駅前広場に美しき洋館が。1875年(明治8)に巨摩(こま)郡睦沢(むつざわ)村(現甲斐市)に建てられた旧睦沢学校校舎を移築したものだ。2階のベランダ、黒塗りアーチの枠など西洋風の意匠が見事で、国指定の重要文化財。館内の見学もできる。
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5.
甲州夢小路 [甲府駅/複合施設]
甲府城下の小路へタイムスリップ!
線路沿いに目を向けると、風格漂う蔵や洋館が立ち並んでいる。かつて小江戸と呼ばれた甲府城下を2013年に再現。ひときわ高くそびえる銅張の塔「甲府 時の鐘」は、江戸時代の鐘楼を復刻したものだ。時折鐘の音が街中へと響き渡っていく。
石畳の小路沿いには蔵が連なり、カフェやレストラン、雑貨店などが立ち並ぶ。水路のせせらぎを耳に、のんびり憩えるテラス席も用意。さらに奥へ進めば、古民家の古材などを使用した重厚感のある建物も。
蔵の合間から列車ものぞき見える。
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7.
カフェ&ワインバー 葡萄酒一番館 [甲府駅/ワインバー]
帰路前に、山梨伝統スタイルでワインをいただく
甲府の地酒といえば、葡萄酒だ。山梨のワイナリーでは昔からワイン造りを手伝う地元の人向けに、一升瓶サイズを用意。家庭では、一升瓶から湯呑み茶碗に注ぎ、地の食材を用いた郷土料理とともに晩酌する。そんな山梨伝統スタイルを楽しむスポットが、2021年4月7日にオープンした。
約30種揃える一升瓶ワインから、瓶替わりで提供。湯呑み茶碗ワイン380円はソーサーになみなみとこぼしてくれるのが嬉しい。ほかにもカクテル、ノンアルなども揃えている。甲斐サーモンとモッツアレラのバジルマリネ300円、甲州ワインビーフのデリサラダ500円など、地元食材を盛り込んだデリカップも楽しみ。
なかには、レジ脇のレンジでセルフで温めるデリもあり、旬野菜のラクレットメルト500円は熱々とろ〜りでチーズが伸びる伸びる。
ワイン樽をテーブルにした立ち飲みには、通勤客も旅人も入れ替わり昼夜集う。駅改札のすぐ目の前。電車の発車時刻までここでゆったりワインを味わいたい。
DATA
8.
ワインセラー(セレオ甲府)[甲府駅/ワイン販売]
山梨産ワインが約300種揃う!
『葡萄酒一番館』で気に入ったワインを見つけたら、立ち寄りたいのがこの店。甲州種、マスカットベーリーA種といった甲州ワインや、スパークリング、果実酒などがずらり。市場に出回らない「登美の丘」4410円や、「ロリアン勝沼甲州」2035円も手に入る。一升瓶、ワンカップも揃え、手みやげにもうってつけだ。
DATA
歴史と文化が薫る甲府の街
甲府城を中心に、江戸、明治、大正、昭和と、各時代の風情を漂わすスポットが点在。粋で洒落た文化は文豪をもとりこにしただけあって、うっとりと時間が過ぎていく。話し好きな地元民の人柄にも触れ、心がほこほこ温まり、のびやかな心地になるのだ。
取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=オカダタカオ
上記の情報は2021年4月現在のものです。
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※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業休止や営業時間・形態の変更、イベントの延期・中止など、掲載内容と異なる場合があります。
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