“中央線”そして“クラフトビール”の夏の風物詩として注目を集める「中央線ビールフェスティバル」が、2024年7月18日(木)~21日(日)の4日間にわたって開催された。中央線沿線&多摩地域のクラフトビールが一挙に集結し、6回目となる今年は、過去最多となる19ブルワリー20ショップが参加。年々スケールアップしている「中央線ビールフェスティバル2024 Summer」をレポート!
このイベントを知らなかった人や予定が合わなくて行けなかった人はぜひ来年! また、行った人も、行けなかった人も、気になるビールがあったら、中央線に乗って沿線のブルワリーに行ってみよう!
幅広い年代でにぎわう和やかな雰囲気
初日の7月18日(木)は、連日の雨模様から一転して梅雨明けを迎え、最高のビールフェス日和! 開場時間の17時に向かうと、早くも人が集まってきていた。会場は武蔵境駅南口の前に立つ「武蔵野プレイス」を背景にして広がる「境南ふれあい広場公園」。クラフトビール好きはもちろん、子ども連れの家族や、犬の散歩がてらなどにふらっと立ち寄ったような人たちもちらほら見かけた。
入口では、事前にオンライン販売をしていたビールチケット(前売り3250円)を受け取る。事前販売で購入をするとと275ml×5杯分で、1杯あたり50円お得になる。
ビールチケットには事前販売のほか、当日チケット(3500円)も購入可能。また、各店舗でその都度ビールの購入もできるので、1~2杯飲むだけでもOK!
これが手に入れたビールチケット! 今年は多摩地域の線画家アーティスト・もんでんゆうこさん描きおろしのメインビジュアルのオリジナルステッカー付き。
ビールチケット購入者限定で、JR武蔵境駅中央改札口付近の特設カウンターにビールチケットの台紙を持っていってアンケートに答えると、8月3日(土)~4日(日)に使えるJRきっぷが当たる抽選に参加できる特典も。新宿~武蔵境駅、新宿~八王子駅、新宿~上野原駅、新宿~奥多摩駅の4区間があるので、当たったJRきっぷはぜひブルワリー巡りに活用したい。
それぞれのブルワリーで3~5種類ほどのビールが提供されているので、トータルではなんと80種以上も。たくさんあり過ぎて選べないという人たちのために、“クラフトビール診断チャート”が会場に登場。さらに各ブルワリーによる“今日の一杯”の紹介も。4日間の会期中で提供されるビールが変わるブルワリーもあるので、これを参考にする人も多く見かけた。
地域コラボで新しいビールが続々登場
OGA BREWING[三鷹駅]
まずは、中央線ビールフェスティバル限定のビールが飲めるという『
OGA BREWING』へ。三鷹駅から徒歩約10分の場所にある、地元密着のブルワリーだ。「クラフトビールを初めて飲む方が気に入ってくれたり、ビギナーの方が驚いてもっと好きになってもらえたりするようなビールを造りたいですね」とは、店主の小笠原恵助さん。
ブルワリーがおすすめする“今日の一杯”にも挙げられていたのが、今回のビールフェス限定の「Craic(クラック)」(左)。ビールの王様“ガンブリヌス”と名付けられたモルトを使ったウエストコーストIPAで、苦みがガツンと際立ちながらもホップの香りやうまみとのバランスもよく、実に飲みやすい。
中央の「HANABI BEER」は三鷹産オレンジピールを使ったフルーティーな白ビール。お店の近所にあるICU(国際基督教大学)の学生が企画・醸造・流通まで取り組んだ「学生団体ICU地産地消プロジェクト」の第2弾として造られたものだ。
学校団体のほか、東京ヴェルディ、アニメ、カフェなど、さまざまな団体とのコラボレーションビールも積極的に造っている。
『OGA BREWING』のもともとのはじまりはビアバー。オリジナルビールの委託醸造を経て、2019年に念願の自社醸造ビールが完成した。現在では、もっと地域との関わりやつながりを大切にしようと、気軽に入れるビアカフェに。ビールに合うフードメニューもそろい、併設された醸造所のタンクを眺めながら過ごすことができる。
お店に足を運んだら、まず味わいたいのがフラッグシップビールの「三鷹ぺールエール」(左)。麦好きの小笠原さんが、麦を感じられて何杯でも飲み飽きない味を目指したというビールだとか。また、小麦のやわらかさで苦みを包み込んだ「三鷹ウィートエール」(中)、ホップの苦みを引き出した「KICHIJOJI IPA」(右)の定番ビールもお見逃しなく。
さつま揚げが時代に合わせて進化
塚田水産[吉祥寺駅]
ビールで喉をうるおしたらフードも欲しくなってきた。
ビールの友に選んだのは、串刺しで食べやすいさつま揚げ! 吉祥寺で昭和20(1945)年に創業された練り物の老舗『
塚田水産』だ。全4種類のうち、「海せんくしカツ」、「いかげそくし」が今回のフェス限定品。その場でどんどん揚げているから、どれも熱々ホクホク!
エビとタコのすり身を混ぜてパン粉を付けて揚げた「海せんくしカツ」は、お店でも人気の“吉祥寺揚げ”スタイル。「若い方にも気軽に練り物を食べてもらいたくて考えました」とは、3代目の塚田亮さん。衣がサクサクでビールにもぴったり。
いかげそにすり身を付けて揚げたという「いかげそくし」は大ぶりで、食べ応えも抜群。ビールのつまみは肉系が多くなりがちだけど、さつま揚げだと魚介ベースだからヘルシーで大正解だ。
吉祥寺の店舗には、さつま揚げだけでもいろいろな味があり35~40種類がずらり。“吉祥寺揚げ”はいか、エビ、チーズが定番で、中がふんわりとして衣はサクサクという食感にハマる人が多いのだそう。今回実際に食べてみてファンになり、またお店に買いに行こうと思った。
創業以来、保存料を使わずにすべて手作り。すり身は毎朝職人が気温や湿度、天気などを考慮して調節し、練り上げているという。長年、地元で愛され続けているのは、熟練した職人の技のおかげなのだ。
さらに、3代目のアイデアで吉祥寺のイベントにも積極的に参加。ガラポンやガチャガチャ、スマートボールなどを取り入れた販売も話題だ。
あっと驚く素材のビールに注目!
ISANA Brewing[昭島駅]
次に向かったのは、『
OGA BREWING』とほぼ同時期の2018年にオープンした昭島の『
ISANA Brewing』。ここで興味をそそられたのが、「ショックパンマン」(右から2番目)。モルト感強めのスコッチエールだが、なんと廃棄予定の食パン20斤を加えて仕上げたというユニークなビール。麦の香りの中にパンの風味がかすかに広がり、まろやかだけど飲み心地はライトでクセになる味だ。
米軍基地友好祭のために造られた「フレンドシップフェスエール」(左)は、今回のようなフェスなどのイベントでしか味わえないビールで、アメリカンホップの爽やかな香りと苦みがたまらない。
半分以上小麦という「シタデル」(右)は、セゾンとベルジャンのダブル酵母が特徴。ドライなキレのよさと酵母由来のフルーティーな香りが個人的に気に入った。
ブリュワーの千田恭弘さんは、半導体や航空宇宙関係のメカニカルエンジニア出身という異色の経歴。「他社が造らないような組み合わせに挑戦するのが楽しいです」と研究心が垣間見える。過去には、うどん出汁エール、グミエール、イチゴ大福サワーエールなど、ユニークなビールを造ってきたそう。
昭島駅から徒歩約3分の場所にあるお店『ISANA Brewing Brewery & Roastery』は、カフェのようなカジュアルな雰囲気。“苦い飲みものでみんなを笑顔にする”がコンセプトで、ビールとともに“苦み”で共通する自家焙煎のコーヒーも提供しているのが面白い。
ガラス越しに醸造所が見えるお店では11タップ用意。そのうち3種類が世界でもまだ珍しい高圧純窒素を使って提供されている。二酸化炭素が溶け込んでいないビールに純窒素を高圧で詰め込んだナイトロビールと呼ばれるもので、きめ細かいクリームのようなふわとろの舌触りは絶品だとか。これはもうお店に行くしかない!
ビールの原料のホップを駅員さんが栽培!
ぽっぽやエール
今年の「中央線ビールフェスティバル」で注目したい一杯がある。
2021年から“東京でホップを育てよう!”プロジェクトにて、JR中央線コミュニティデザインの駅員さんが栽培したホップを使用して造られている「ぽっぽやエール」が今回初めてメイン会場に出店。
エキナカなどの催事で不定期販売されているボトルビールが、“タップで提供されている”と注目を集め、ビールを求めるお客さんで行列もできていた。
武蔵境駅では駅前のプランターでホップが栽培されていて、駅員さんによると「通りがかった方から何をつくっているのか聞かれて、ホップというビールの原料になる植物を育てているのですとお話すると、楽しみにしていますと言っていただけることもありました」とのこと。
今回のビールには武蔵境や稲城長沼で昨年収穫されたホップを使用しているが、今年は、武蔵小金井、国分寺、西八王子など中央線・南武線の沿線11ヶ所に栽培が拡大され、これからますます話題になりそう。
「ぽっぽやエール」は、駅員さんが育てたホップを使って、中央線武蔵境駅の高架下にある『26K Brewery』で醸造されている。すっきりとした爽やかな味わいとフルーティーな香りも心地よくてスルスル飲めてしまう。
「ぽっぽやエール」は不定期に催事でも販売されている。販売情報は「中央線と暮らす」アプリで発信されているのでチェック! イベント以外では、セレオ八王子北館2階にある八王子・多摩エリアのアンテナショップ『はちまるステーション』で購入可能。
オリジナルグッズをお土産に
チケット売り場の隣では、フェス限定グッズを販売していた。エコバッグ2000円、手ぬぐい1500円、Tシャツ3000円のほか、ビールチケットに付いていたオリジナルステッカー300円も。ここでしか買えない限定グッズなので、ぜひゲットしたい品物ばかり!
鶏肉100%パテと自家製バンズがこだわり
COCKTAIL HAMBURGERS 武蔵境店[武蔵境駅]
会場で配布されていた公式ガイドブックには、ビールフェスのあとの立ち寄りにおすすめな武蔵境駅周辺の店舗をまとめた「二軒目マップ」が掲載されていた。
ビールフェスだけで帰るのもいいけど、少し座ってひと休みしてから帰ろうと、会場のすぐ近くの『
COCKTAIL HAMBURGERS 武蔵境店』へ。
ハンバーガーというと、牛肉や豚肉が使われていてガッツリ重いイメージがあるけれど、こちらのパテは鶏肉100%。「女性一人でもふらっと立ち寄れるようにヘルシーに仕上げました」と、店主の木下夏海さん。クミンやナツメグ、バジルなどのスパイスやハーブのほか、鶏もも肉を皮ごとミンチにすることで鶏油が練り込まれてしっとりと焼き上がるのだそう。
バンズも隣接したベーカリーで当日焼いたものだけを使用。ルヴァンの天然酵母やバター100%など素材にもこだわり、もっちりふわふわだ。
ハンバーガーは全8種あり、イタリアンクリームチーズ、カリブアボカド、メキシカンサルサなど、趣向を凝らしたラインナップ。「トマトとタマネギの一番シンプルなハンバーガーだからこそ、鶏肉のパテのジューシーさとバンズの甘みを楽しめますよ」という店主・木下さんのアドバイスを聞いて、コックテイルトマトバーガー600円(サイドメニューのサツマイモスティックと生ビール+700円)をオーダー。“COCKTAIL”という店名の通り、ビール以外にカクテルも豊富。好みを伝えれば、メニュー以外のカクテルもつくってくれるそう。
サツマイモスティックは、40~50分ほど蒸かしてから高温で一気に揚げるため、外はカリッ、中はとろとろ。メープルシロップを合わせたブルーベリーソースを付けると、まるでホットケーキのよう! 根強いファンがいるというのも納得だ。
こぢんまりとした店内のため6名から貸切OKで、1人3500円~で2時間飲み放題という太っ腹。コースの内容は決まっているが、ハンバーガーを一人1個入れてほしいなど相談にも応じてくれる。ビールフェスで仲間と久々に会うというようなときに重宝しそうだ。
ビールフェスのざわめきやオープンエアーで飲む開放感もいいけれど、二軒目で落ち着いた時間を過ごす締めくくりも悪くない。二軒目に立ち寄ったおかげで満足感が高まって充実した一日になった。
もっとクラフトビールを飲んでみたいと思ったら、「中央線と暮らす」アプリで開催しているスタンプラリーに参加しよう。フェスの参加ブルワリーに足を運んでスタンプを3つ以上集めると抽選でプレゼントが当たる。スタンプラリーは8月31日(土)まで。クラフトビールの夏はまだまだ終わらない!
中央線で巡る!ブルワリースタンプラリー
取材・文=井島加恵 撮影(ビールフェスティバル会場)=逢坂聡
上記の情報は2024年7月現在のものです。
※掲載ビールは取材時のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。