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プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!

三鷹駅
太宰治が住み暮らした三鷹で、その素顔にふれる
『走れメロス』、『人間失格』など、数々の作品が愛されている文豪・太宰治。自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、1939(昭和14)年に所帯を持ち、住み暮らし、そして終焉(しゅうえん)を迎えた地が三鷹駅の南口界隈だ。ゆかりの地を辿りながら、その幻影を追ってみた。
この記事の目次
目的地までのアクセスと歩き方
新宿駅から中央線で約18分。南口を出たら、さくら通りから本町通りに入り『太宰治文学サロン』へ。次に、駅前まで戻り『三鷹コラル』へ。5階の三鷹市美術ギャラリー内に『太宰治展示室』が、4階に『柏や』が入る。最後は線路沿いを西へ歩き、跨線人道橋跡へ。駅南口界隈を歩くルートだ。
太宰治文学サロン[三鷹駅/ブックカフェ]
豊富な書籍と市民それぞれの目線で、太宰の人となりを知る

酒のみならず、日用品も広く扱い、太宰一家のつましい暮らしを支えるなじみの店だったという。

太宰が通った店としても知られる銀座のバー『Lupin(ルパン)』を模したカウンターの奥には、年表や相関図も掲げられている。
2008年の開館当初は3年間限定の予定だったが、継続の声が上がり現在に至る。駅前の展示室開館に伴い、2022年にリニューアルした。
圧巻なのは、太宰治研究の第一人者・山内祥史(やまのうち しょうし)氏から寄贈された膨大な蔵書。
師である井伏鱒二や、親友の今官一などによる太宰の人物譚、妻や娘の手記があり「書店では見つけられない著作もありますよ」と、学芸員の吉永麻美さん。
通って読破する人、古書店へ探しに出かける人も少なくない。


「この小さな家で、太宰一家は暮らしていました」と吉永さん。
台所に妻の津島美知子が立ち、裏の縁側で子供たちと憩うほのぼのした情景が家庭人・太宰を伝えている。

三鷹の人にとって、太宰一家は“近所に暮らした有名人”的存在で、まちに伝わる逸話など、ガイドごとに聞ける話はさまざま。しかも、それぞれ太宰評や推し作品が異なり、見落としていた作品に出合えるのも楽しみ。
大人になってから、太宰を深く知るようになったというガイド・角村恵美子さんの推しは『道化の華』。
「『晩年』に収録されていますが、これは、芥川賞にまつわる作品でもあるんです。第1回芥川賞にノミネートされたのは『逆行』でしたが、選考委員の佐藤春夫が推したのは『道化の華』。結局どちらも受賞に至りませんでしたが」
しかしその後、文壇で絶大な影響力を及ぼす川端康成が選評で太宰の私生活に言及したことから、文壇を騒がす事件へとつながっていったという。
毎月第4日曜には、ガイドによる太宰ゆかりの地巡りツアーも開催。人間・太宰治を知る場になっている。
DATA
太宰治展示室 三鷹の此の小さい家[三鷹駅/展示室]
太宰が暮らした家の間取りがそのまま展示空間に



台所があった3畳、居間の4畳半、縁側の外が展示空間だ。

床の間には義父の遺品である掛け軸がかけられ、本棚代わりのりんご箱も置かれている。
ハンガーにかけられた仕立てのいい外套(がいとう)は、太宰が愛用したものと同じスタイルの袖のない二重廻しで、着てみれば、太宰の懐に包まれている気分。そっと文机の引き出しを開けてみれば、原稿用紙があり、1枚引き抜いて、太宰になりきって作品を模写するのもいい。
太宰が暮らした間取りそのままの小さな家で、太宰一家の息吹を感じとりたい。
季寄せ 蕎麦 柏や[三鷹駅/和食・そば]
酒を飲みながら、太宰終焉サイドストーリーに思いをはせる


山崎富栄は皇族の着付けも行う一流の腕の持ち主だったが、戦争で焼け出され、寡婦となり、戦後は、日本初の美容学校を設立した父の弟子が開いた「ミタカ美容院」で働いたという。
ところが、太宰と出会い、入れあげ、一変。
貢ぐために岩崎さんの祖母に金の無心をし、仕事を辞めて太宰の秘書になってしまった。
しかも、心中直後、『柏や』は三鷹駅前で唯一電話を置く店だったため、新聞記者が詰めかけて大騒動だったとか。
「もともと太宰はツケで買い物するし、美容室のオーナーは恩師に顔向けできないと悲嘆に暮れるし。駅前の商店の間で、太宰の評判はすこぶる悪いものでした。黒歴史です」と笑う。

お造り4点盛り3200円もさることながら、海老と旬野菜の天ぷら盛り合わせ2156円、アサリとハマグリのかき揚げ、夏のハモなど、季節の天ぷらは見逃せない。
薄衣が軽く、サクッとした歯触りのあと、素材の香味が突き抜ける。
また、洋食出身の店長・佐藤祐輔さん(写真右)のアイデアを盛り込んだ和洋融合のつまみもあり、利き酒師厳選の日本酒とともにゆっくり味わいたい。

出汁に津軽鴨の風味が豊かに溶け出し、二八そばの甘みを際立たせる。
昼から夜まで続けて営業する使い勝手の良さ。昼飲みするご近所さんも少なくない。
DATA
三鷹跨線人道橋跡ポケットスペース[三鷹駅/文化施設]
太宰が愛した散歩スポットで物思いに耽ってみる!?

もともと、1929(昭和4)年に開設した、三鷹電車庫(現・三鷹車両センター)で分断された駅の南側と北側とを結ぶ約90mの橋で、富士山を望む名スポット。ここからの眺めをこよなく愛した人は数知れず。太宰もまた、執筆の合間によく訪れていたという。
太宰宅前にかつて植えられていたゆかりの植物、百日紅(サルスベリ)をシンボルツリーにしたパークには、太宰にまつわるパネルも展示されている。


たもとにある二次元コードを読み取り、アプリを起動させて足跡マークの上に立つと、かつての人道橋がスマホに浮かび上がる。
太宰を気取って記念撮影するのも楽しい。
人間・太宰治の泥くさい足跡を知る
家庭人だった一面あり、女性問題に悩まされた一面あり。数々の作品に描いた三鷹の地は、すっかり様変わりしているが、人間味にあふれる太宰の痕跡は地域の人の記憶を通して今に伝わっている。話を拾い聞きして歩けば、太宰の生き様がグッと身近に感じられる。
取材・文=林 さゆり 撮影=逢坂 聡
上記の情報は2026年6月現在のものです。
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