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型にはまらないのが中央線流 個性豊かな中央線のカレー
カレー店が多い中央線沿線。
しかし、中央線のカレーと言っても、その種類やレシピは実に様々。たとえ同じ種類のカレーだったとしても、作る人が違えば全く違った見栄えや味わいになる。決まった型にとらわれない、自由な表現ができるのがカレーの大きな魅力なのだ。そして、音楽やアートなど、多様な文化が共存し、融合する中央線カルチャーと同様に、中央線には個性豊かなカレーがある。カレー×中央線は最強コンビ! さあ、お気に入りの一皿を見つけに行こう。
この記事の目次
フレンチ出身シェフが手がけるヘルシーなご褒美カレー
Épice舞(エピスまい)[立川駅]
どちらかというとジャンクな印象があるカレーを、フレンチのエッセンスで上品で美しい料理に昇華させる『Épice舞』。五分づき米を皿の中央に盛り、その周りにインド式ピクルスのアチャールをはじめとした副菜を配した様子は彩りも良く、まるで絵画のパレットのよう。これから始まるひとときが特別なものになる予感で満たされる。
店主は三つ星フレンチで腕を磨いた若きシェフ・鈴木勇(いさみ)さん。創造的で革新的な料理を得意とするフレンチレストランでの経験を活かし、見た目の美しさだけでなく、野菜を中心としたさまざまな素材の組み合わせによる独創性も遺憾なく発揮。素材の良さを味わえるように、極力スパイスを使わない引き算のカレーを目指している。
「ランチセットには30種程度の野菜を使用して、カレーはグルテンフリー。コロナ禍に開店したこともあり、健康を意識したレシピを心がけています」。
「ランチセットには30種程度の野菜を使用して、カレーはグルテンフリー。コロナ禍に開店したこともあり、健康を意識したレシピを心がけています」。
舞ランチセットは前菜、カレー2品、副菜7品、豆スープ、ドリンクと自家製ヨーグルトがセット。定番の塩麹チキンカレーのほか、週替わりのカレー2種から選べる。
副菜はちょうど一口になるよう切り揃えられ、右に冷菜、左に温菜を配置。三つ星フレンチで学んだ細やかな配慮が活かされている。親しみやすいカレーでメッセージを込められるのは意味があることだと鈴木さん。若きシェフの挑戦はまだまだ続きそうだ。
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素材の魅力を最大限に引き出すスパイス使い
Negombo33 高円寺[高円寺駅]
西所沢(埼玉県)に本店を持つスパイスカレーの人気店。大阪に端を発した「スパイスカレー」が全国的に注目を集めたのは2017年頃から。だが、この店では2009年の本店創業時からスパイス使いが印象的なカレーを提供している。
食品関連会社出身で研究熱心な山田孝二さんが生み出す独創的なカレーは、早くからカレー通の間で話題となり、多くのファンを獲得した。
2号店は2018年、高円寺にオープン。本店からのアクセスが良く、中央線の中でもサブカル色が強く、多国籍感が漂う点も決め手になったようだ。
食品関連会社出身で研究熱心な山田孝二さんが生み出す独創的なカレーは、早くからカレー通の間で話題となり、多くのファンを獲得した。
2号店は2018年、高円寺にオープン。本店からのアクセスが良く、中央線の中でもサブカル色が強く、多国籍感が漂う点も決め手になったようだ。
「山田さんの作るカレーはとてもシンプルで、クローブ、カルダモン、シナモンなど、使用するスパイスの種類は意外と少ない。仕上げに加えるガラムマサラの配合が特徴的で、アジアを感じさせる味わいになっています」と高円寺店長の根来博志(ねごろひろし)さん。
看板の「ラムキーマカレー」(手前)は、複雑なスパイスを駆使してラム独特の風味を消すのではなく、ラムの持ち味を引き出すためにスパイスを使う。粗挽き肉の肉感もあり “ラムらしさ”が際立つカレーだ。仕上げの花山椒が華やかで鮮烈な印象を添えている。
「ポークビンダルー」(奥)も創業当初からの人気メニュー。ヨーグルトやスパイスでマリネした豚角煮を使ったポルトガル由来のカレーだが、酸味を全面に押し出さずまろやかな味わいに仕上げている。
「ポークビンダルー」(奥)も創業当初からの人気メニュー。ヨーグルトやスパイスでマリネした豚角煮を使ったポルトガル由来のカレーだが、酸味を全面に押し出さずまろやかな味わいに仕上げている。
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本格インドカレー×もちもちのチーズナンがベストコンビ!
Surya Sajilo(スーリヤサジロ)[吉祥寺駅]
吉祥寺の中道通り沿いで2020年から営業する『Surya Sajilo(スーリヤサジロ)』。吉祥寺の『Sajilo Cafe(サジロカフェ)』をはじめ、西荻窪、軽井沢にも姉妹店を持つ人気店だ。
本場インドで腕を磨いたネパール人シェフが作るカレーは、インドとネパールカレーの要素をミックスし、日本人向けにアレンジしたもの。唐辛子を使わず、20種類以上のスパイスから作るグレービーは、子どもからお年寄りまでみんなが楽しめるマイルドな味わい(チリパウダーで辛さ調整も可)。
ランチのカレーは、チキン、マトン、ベジタブル、日替わりから選べる。定番のチキンカレーは、野菜の甘みにスパイスの風味が調和して、まるで玉ねぎのポタージュスープのよう。スパイスカレー上級者におすすめのトマトベースのマトンカレーや季節の食材をふんだんに使った日替わりカレーも人気だ。
ランチのカレーは、チキン、マトン、ベジタブル、日替わりから選べる。定番のチキンカレーは、野菜の甘みにスパイスの風味が調和して、まるで玉ねぎのポタージュスープのよう。スパイスカレー上級者におすすめのトマトベースのマトンカレーや季節の食材をふんだんに使った日替わりカレーも人気だ。
チーズナンは、これを目当てに訪れる人も多い店の名物。ふわふわ、もちもちの食感で、生地はほのかに甘く、たっぷりと包まれたとろとろのチーズの塩気にマッチしていてたまらない。はちみつがけ(+110円)で甘さを追加するのも通の食べ方だ。
オーナー夫妻の世界観を映し出した、ヨーロッパアンティーク調の落ち着いた店内は、唯一無地の空間。吉祥寺に訪れたら、非日常に浸りながら本格インドカレーを味わいたくなる。
ジャズの音色に包まれながら名物のチキンカレーを
JAZZ TAKAHASHI TOKYO(ジャズタカハシトウキョウ)[御茶ノ水駅]
御茶ノ水エリアで15年愛されていたジャズ喫茶『JAZZ OLYMPUS!(ジャズ オリンパス)』の店舗を新オーナーが引き継ぎ、2024年8月にオープン。一歩店内に入れば、巨大なスピーカーから流れるジャズの音色に全身をすっぽりと包まれる。
そんな音楽に満たされた空間で味わえるのは、『JAZZ OLYMPUS!』時代の名物「赤いチキンカレー」をオマージュしたオリジナルカレーの「髙橋カレー」1760円。実はこのカレーを目当てに訪れる人も少なくない。
そんな音楽に満たされた空間で味わえるのは、『JAZZ OLYMPUS!』時代の名物「赤いチキンカレー」をオマージュしたオリジナルカレーの「髙橋カレー」1760円。実はこのカレーを目当てに訪れる人も少なくない。
シンプルな見た目とは裏腹に、独自に調合した約20種類ものスパイスの風味が重なり合う奥深い味わいだ。ほろほろ食感のチキンも、噛むほどに奥から旨みがジュワッと押し寄せる。赤色のカレールーだが辛さは控えめなので、スパイスの香りや余韻を最後の一口まで楽しめる。
「カレーはジャズなんです」と語るのは、店主の髙橋健さん。自身も生粋のジャズプレイヤーである髙橋さんは、誰もが親しみやすい音楽にも高度で難しい技法が使われているように、音楽の深みをカレーで表現したという。
耳で心地よい音楽を、舌でスパイスの深みをじっくりと感じてみよう!
耳で心地よい音楽を、舌でスパイスの深みをじっくりと感じてみよう!
和の食材にとことんこだわった和だしカレー
平日昼だけ[荻窪駅]
優しい和だしが溶け込んだサラサラのカレーに、多種多様なトッピングが彩りを添える……そんな唯一無二の和だしカレーを提供する『平日昼だけ』。店名の通り、荻窪銀座商店街の裏路地で“平日の昼だけ”営業する間借りカレー店だ。
店主の小山直昭(こやまなおあき)さんは、居酒屋やラーメン店など多ジャンルの飲食店を経験してきたが、カレーを作るのは『平日昼だけ』が初めてだそう。長年の技術を活かし独自に作りあげた和風のカレーは、だしやスパイスの調合をグラム単位で何度も調整して完成。「イメージはそば屋のカレーです」と話す。
カレーには15~20種類のスパイスを使っているが、スパイスの風味が勝ちすぎないよう、鰹やいりこ、昆布、干ししいたけからとった和だしとかえし醤油でバランスをとる。一口目から和だしの優しい風味が広がり、奥からじわりとスパイスもやってくる。メニューは和だしそぼろカレーの1種類のみだが、バラエティ豊かなトッピングでアレンジは自在だ。
中でも、いわしを2日かけて骨がとろとろになるまで生姜醤油で煮込んだいわしの生姜煮(+250円)、ぶ厚い豚バラをカレーの二番だしで煮込んだブーたれ(+350円)が定番。付け合わせのたくあん、酢漬けみょうがなど、和の食材がアクセントもくれる。決してパンチは強すぎないのに、しっかりと記憶に刻まれるカレーは、トッピングを変えて何度も楽しめる。
中でも、いわしを2日かけて骨がとろとろになるまで生姜醤油で煮込んだいわしの生姜煮(+250円)、ぶ厚い豚バラをカレーの二番だしで煮込んだブーたれ(+350円)が定番。付け合わせのたくあん、酢漬けみょうがなど、和の食材がアクセントもくれる。決してパンチは強すぎないのに、しっかりと記憶に刻まれるカレーは、トッピングを変えて何度も楽しめる。
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半世紀の歴史を紡ぐ三角ライスのチキンカレー
これく亭[八王子駅]
木製ドアや窓枠が山小屋のような佇まいの『これく亭』は1977年創業。八王子市内で何度か移転をしながらも、半世紀近く愛され続ける老舗カレー店だ。扉を開けるとスパイスの香りがふわりと漂い、食欲を刺激する。
店主・多川直良さんに創業のきっかけを尋ねると、会社員時代に出合った九段下の本格インドカレー店『アジャンタ』(現在は麹町に移転)の味に衝撃を受けたのが始まりだったと回顧する。
それまで出合うことのなかった本格的なインド料理に刺激を受けた多川さんは、会社退職後、第二の人生にカレーを選び、店を立ち上げた。47年前は今のように気軽にネットでレシピを調べることなどもちろんできない。文献で研究を重ね、「自分が好きな味」のレシピを完成させた。
それまで出合うことのなかった本格的なインド料理に刺激を受けた多川さんは、会社退職後、第二の人生にカレーを選び、店を立ち上げた。47年前は今のように気軽にネットでレシピを調べることなどもちろんできない。文献で研究を重ね、「自分が好きな味」のレシピを完成させた。
クミンやクローブなどのスパイスだけでなく、フェンネル、セージ、タイムなどのハーブも加えた20種以上の素材をバランスよく配合。水を使わず、八王子の磯沼牧場のピュアミルクだけで煮込むことでまろやかに仕上げるレシピは、創業当初から変わらない、穏やかで香り豊かな一皿だ。
名物の“ピラミッド型ターメリックライス”も創業当初からの多川さんのアイディア。また、付け合わせのサニーレタスを食べやすいようにオリジナルのスパイス塩を調合するなど、遊び心と独創性にあふれた多川さんのカレーを求めて、創業当初から通い詰めている常連客も少なくない。
DATA
文・撮影=篠原美帆(Épice舞・Negombo33 高円寺・これく亭)、稲垣恵美(Surya Sajilo・JAZZ TAKAHASHI TOKYO・平日昼だけ)
撮影=加藤熊三(平日昼だけ)
上記の情報は2024年9月現在のものです。
※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
※表記されている価格は税込みです。