- トップ
- 連載
- プチ旅コンシェルジュ
- 横浜線相原駅から七国峠の古道を歩く
プチ旅コンシェルジュへようこそ。
いつも通勤・通学など、日常の生活で利用する中央線の沿線や中央本線・青梅線。その先の沿線には、日帰りで楽しめるスポットがたくさんある。
この連載では、毎回さまざまなテーマで駅から日帰りで楽しめるおすすめコースを紹介。よく利用する駅にも、少し歩けば知らなかった魅力が見えてくる。
次の休日は中央線に乗ってプチ旅しよう!
相原駅
横浜線相原駅から七国峠の古道を歩く
町田市北部に広がる特別緑地保全地区。緑豊かな尾根道が、奈良時代から用いられる七国峠の鎌倉古道へと通じている。深い森のようでいて、里はすぐ間近。自然と寄り添う相原の暮らしにも出合える散歩道だ。
この記事の目次
目的地までのアクセスと歩き方
新宿駅から中央特快で約40分の八王子駅にて横浜線に乗り換え、約10分の相原駅で下車。東口を出て北上し、乗馬クラブを超えた先、左手にある駐車場と林の間の小径から特別緑地保全地区へ。約6kmの道程はアップダウンがあるうえ、歩道がぬかるむ場所もあるので、トレッキングシューズで出かけたい。虫除け、虫刺され薬もあるといい。水分持参も忘れずに。
七国・相原特別緑地保全地区[相原駅]
尾根道と鎌倉古道を巡る、森さんぽ
鳥の声が賑やかに響き渡り、風が通るたび森中の緑がさざ波のようにザワザワ歌いだす。
照りつけていた太陽が木の葉に遮られ、空気はひんやり。倒木を赤や白のキノコが彩り、可憐な野花が咲き、小径に小花が散り敷かれている。
ひらひら舞う蝶に誘われるように、七国公園の階段を下りて上って進めば、右手に山、左手は谷の小径だ。低木、20m以上の高木、草木が入り乱れ、谷の奥へ奥へ、森が深まっていく。
旧東海道と八王子の甲州街道を結ぶ七国峠の切り通しで、鎌倉幕府時代には上州や武州の侍たちが往来。明治以降は八王子から横浜へ輸出用の生糸運ぶ道となり、“絹の道”と呼ばれたという。
今はまっすぐに延びる森のトンネルが続くのみ。
明治時代に大日如来像が安置された大日堂付近は、かつて名勝 七国山関七州見晴台があった場所。
かつてここから武蔵、相模に加え、甲斐、信濃、安房、下総、上野の七つの州が見渡せたことから“七国峠”と名付けられたとも言われている。今は残念ながら、見晴らしは樹木の影。
代わりに峠のてっぺんは、空がぽっかりまるい。
icecream factory PiPi[相原駅/ジェラートショップ]
牧場直営! 喉を潤すミルクジェラートを
ロッヂ風の店構えがキュートなショップは、近隣にある北島牧場の直営店。
イタリアで修行したオープニングスタッフのレシピを、店主の北島瑛梨奈さんが受け継ぎブラッシュアップ。
「乳脂肪分が高いので、牛乳そのものの甘みが濃いですよ」と、さまざまなフレーバーに牛乳を用いる贅沢さ。毎朝、作りたてのフレッシュな味を用意する。
また、右カップのキュンと酸味が弾ける八王子産パッションフルーツや、ほんのりした渋みが涼を呼ぶ狭山産東京紅茶など、周辺地域の農家から仕入れる旬の素材を使ったフレーバーも目白押し。
相原中央公園[相原駅/公園]
林、芝生、花、眺望。散策路を巡るたび、景色が変わる!
なだらかな丘に立つと、人の手が入った雑木の林に陽光がまだらに降り注いでいる。
下りきれば、原木しいたけ栽培の木組みが並び、向かいの小屋では伐採した木材を月に1〜2回炭焼きにしている。林に煙がたなびく様はまるで、古来の里の原風景のようだ。ここで作られた竹炭、木炭、竹酢液、木酢液は公園管理事務所で販売される。
「ここは谷戸になった相原の地形を生かした自然公園です。山にはイノシシやムササビもいますよ」と、園長の井上春雄さん。
“四季の丘”に向かえば、5月は色とりどりのルピナスが花盛り。
バラ、紫陽花など、季節ごとに花を咲かせ、「一年中、花のある公園作りを目指しています」と井上さん。
折しも6〜8月はブルーベリーの季節。摘み取り体験ができる農園も点在しているので、立ち寄るのもいいかも。
DATA
木のカフェ[相原駅/カフェ]
古民家で野菜満載ランチと手作りケーキでほっこり
「調理師免許を持つ母と料理上手な叔母が料理を、私はケーキ作りと接客を担当しています。デザイナーの従妹が内装を手がけました」と話す。押し入れに眠っていた曽祖母の嫁入り道具の長持ちを置き、モダンな照明を部屋ごとに灯すなど、現代的なセンスと家族経営のなごみ感が心憎い。
ふと見れば、一角でレトロポップな台湾雑貨、壱岐島の食材も販売している。
「我が家にホームステイした台湾人は今や私の親友。私が会いに出かけるたび、台湾雑貨も仕入れています。また、壱岐島出身の父の親友から仕入れた塩やいりこ、焼きイカも人気です。いろんなご縁でこの店ができています」。
中でも米粉のシフォンケーキ450円は、むっちりしっとりふっかふか。種類豊富なオーガニックハーブティ650円とともにいただきつつ、客はみな、ゆっくりのんびりおしゃべりしている。
DATA
里山で豊かな暮らしを実感
緑深き古の山道から下りてくれば、一帯はのどかな里の風情。地元食材を用いたお店も点在する。相原駅のみならず、町田街道沿いに焼き鳥店、イタリアン、ベーカリーが立ち並び、締めの一杯、手みやげのパンも手に入る。朗らかな人々と話しながら、ゆっくり電車を待ちたい。
取材・文=林 さゆり 撮影=逢坂 聡
上記の情報は2024年5月現在のものです。
※料金・営業時間・定休(休館・休園)日、イベント内容・期間などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
- Tag